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LIFESTYLE

ワシントンD.C. あれこれ、それから。#1 「家が決まらない」

飛行機が高度を下げると、窓の外には広大な土地が見えてきた。羽田空港から13時間ほどで、ワシントン・ダラス国際空港に着いた。着陸直前に体調を崩した息子、機内で見た『インサイド・ヘッド』で泣き疲れた私、そして予約していたタクシーのドライバーと連絡が取れず焦る夫。ドキドキもワクワクも味わうことなく、私たちのアメリカ生活が始まった。

今から3ヶ月ほど前、夫の転勤でワシントンに来た。私と息子にとっては、初めての海外生活。英語はほとんど話せない。息子は学校に馴染めるだろうか、家族や友人から遠く離れた場所で楽しく過ごせるだろうか、不安は山のようにあったはずだが、引越しの準備や手続きに追われ、深く考える時間もなかった。

そんな事情を察してか、息子が「行ってみないと分かんないじゃん?楽しいかもしれないし」と前向きなことが救いだった。

ワシントンD.C.と言えば、ホワイトハウス、連邦議会議事堂などが集まる「アメリカ政治の中心」。春に咲き誇る桜は、日本から贈られたことでも有名だ。どこの州にも属さない「コロンビア特別区」で、博物館や美術館、大学などが点在している。

そのイメージのまま、街中は静かで落ち着いた雰囲気。自然も多く、ホワイトハウス近くでも、野生のリスがいるほどだ。

私たちがまず取り掛かったのが、家探し。日本と同様、アメリカでも都心に行くほど家賃は高い。予算や子どもの学校、住環境を考え、D.C.近郊で、物件を探した。

アメリカでは賃貸の集合住宅を「アパートメント」と呼ぶ。間取りは「Studio」と呼ばれるワンルームから始まり、ベッドルームの数によって、「1BR」「2BR」と増えていく。冷蔵庫や洗濯機、乾燥機などの家電は備え付けられていることが多い。ジムやプールがついていることも一般的だそうで、物件によっては、屋上にBBQができるスペースもある。

1週間のホテル暮らしの間に、物件を決め、入居の準備を進めたい。ワシントンに着いた翌日に、見学の予定を詰め込み、日本で目星をつけていた物件を見て回った。時差ボケで3時起き、眠気に襲われていたけれど、大きな窓からやわらかな日差しが差し込むリビングに心躍った。住民の共有スペースには大きなソファが置かれ、ここで読書できたらと、想像を膨らませた。午後まで見学する予定だったが、午前中に見た物件で十分満足し、早めにホテルに戻った。夕方には物件を絞り、夫が申し込みの手続きを始めた。「1週間で新しい家に入れそうだね」と家族でひと安心し、夕飯を食べた。

しかし、このドアウェーの地で、そんなに順調に事は進まない。翌日、申し込みをしたアパートメントの管理会社から、夫に何度も問い合わせが入る。必要な書類を提出して、逐一対応する夫。そんなやりとりを2日ほどして、最終的に管理会社から言われた条件は「保証人」だった。

アメリカの入居審査は日本と比べ、厳しいと言われている。日本では雇用形態や勤続年数などが審査されるが、アメリカでは「クレジットスコア」と言われる、お金を借りた時にきちんと返しているかを数値化したものが重要視される。アメリカに来て数日の私たちに「クレジットスコア」などあるわけがない。というか、アメリカのクレジットカードすら手元に届いていない。

日本で準備してきた夫の収入証明は「信頼の証」にはならず、アメリカで保証人を頼める人もいない。とにかく、家を決めなければ。いつまでも一つの物件にこだわる必要もない。見学して気に入った他の候補もあったよねと、HPを見る。あれ?数日の間に、家賃が上がってない?!予算を大きくオーバーしていた。

そこから、資料を片手に数日前に見た物件を思い出す。ここよりはこっちの方が部屋が明るかった、間取りがこっちの方が使いやすいなどなど、家族会議の結果、第3候補にしていた物件に申し込みをした。

ここの審査にも多少時間がかかったが、管理会社が指定する保証会社を使うことで入居できることになった。私たちが求められたのは家賃1ヶ月分ほどで、なんとか支払える範囲内だった。調べてみると、保証会社に求められる額は様々なようで、数百万円に上るケースもあるようだ。

予定よりも2日遅れで、なんとか入居することができた。しかし、トラブルは続く。購入したベッドが予定日に届かない。夫が問い合わせると、配送がキャンセルされたとのこと。え?誰が?なんで?疑問しかないが、寝る場所がないのは死活問題だ。ベッド屋に駆け込み、なんとか翌日に届くよう手配してもらった。

その後も、インターネットの工事が勝手にキャンセルされたりと、あたふたしっぱなしだった。日本ではあまり経験のないことに驚かされるが、ここはアメリカ。ドーンと構えていないと、きっと何かに飲み込まれてしまう。

まずは家族で、安心して眠れる場所があることに感謝しながら、この場所を楽しんで行けたらと思った。

✒️サリー