この記事は防災の専門家が書いたものでも、実際に被災した経験をもとに書いたものでもありません。今日の地震をきっかけに、信頼できる情報を調べてまとめた、一人の飼い主としての備え録です。私とうちの子のためだけでなく、同じように愛犬と暮らすすべての方の参考になれば嬉しいです。
先日、地震がありました。
まず、今回の地震で被害に遭われた方々が、一日も早く安全な環境に戻れることを願っています。
私が住んでいる東京の震度はそこまで大きくなかったけれど、揺れを感じた瞬間に頭をよぎったのは、「うちの子は大丈夫か」ということでした。
私はフルリモートで働いているので、ほとんどの時間を愛犬と一緒に過ごしています。
「在宅だから大丈夫」と、どこかで思っていた。
でも今日の揺れで気づきました。一緒にいるだけでは、足りないと。
うちの子はミニチュアダックスフンド、もうすぐ8歳。体重は5キロ近い。
いざというとき、この子を抱えて逃げられるか。
キャリーに入ってくれるか。避難所でウェットフードは手に入るか。考えはじめたら、備えられていないことだらけでした。
この記事では、犬と暮らすすべての方に向けて、地震への実用的な備えをまとめています。シニア犬特有のポイントも交えながら紹介していきます。
「一緒にいるから大丈夫」は思い込みかもしれない

在宅勤務の方は特に、「地震が来ても自分がそばにいる」という安心感があると思います。
私もそうでした。
でも冷静に考えると、一緒にいることと、適切に動けることはまったく別の話です。
揺れがおさまった瞬間、あなたはすぐに動けますか?
キャリーの場所はわかりますか。フードと水はすぐ取り出せますか。避難所の場所は把握していますか。
「一緒にいる」という事実が、備えの甘さに気づきにくくさせている。そのことを、まず自覚するところからはじめました。
地震のとき、犬はどうなるのか

備えを考える前に、地震のとき犬がどういう状態になるかを理解しておくことが大切です。
犬は人間より早く地震を感じる
犬は人間よりも鋭い聴覚と感覚を持っています。
地震のP波(初期微動)を人間より早く感知できることが知られており、本震が来る数秒前にすでに不安な行動を見せることがあります。
ペットカメラの映像などでも、揺れが始まる前に安全な場所へ移動する犬の様子が記録されています。
パニックになる犬も多い
一方で、突然の揺れと異音によって強い恐怖を感じ、パニック状態になる犬も少なくありません。具体的には次のような行動が見られます。
- 激しく吠え続ける
- 部屋の中を走り回る
- ドアや壁を引っ掻く
- 隅に隠れて動かなくなる
- トイレの失敗をする
こうした状態の犬を抱えてキャリーに入れ、避難するのは想像以上に大変です。5キロ近い体重のシニアダックスとなればなおさらです。
飼い主が落ち着いていることが、犬を落ち着かせる
犬は飼い主の感情に非常に敏感です。
飼い主がパニックになれば、その興奮がそのまま犬に伝わります。
逆に飼い主が落ち着いた行動をとることで、犬も比較的冷静でいられることがわかっています。
「まず自分が落ち着く」
パニックになった飼い主を見て、犬が落ち着いていられるはずがないのです。
まず自分の安全、それから愛犬のこと

環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」では、災害時はペットと一緒に避難する「同行避難」が基本とされています。
ただし、同行避難は「避難所まで一緒に移動すること」であって、避難所内で同じ空間で過ごせることを意味しません。
多くの避難所では、ペットのスペースは人間とは別に設けられます。このことは事前に理解しておく必要があります。
また、必ず同行避難しなければならないわけでもありません。
自宅が安全な場合や、信頼できる預け先がある場合はそちらを選ぶことも選択肢のひとつです。
大切なのは「どうするか」を事前に決めておくことです。
【持ち出すもの】愛犬のための防災チェックリスト

避難時に何を持ち出すかは、事前に決めてまとめておくことが重要です。
いざというときに「あれはどこだっけ」と探している余裕はないはずです。
持ち出し用のバッグをひとつ用意して、すぐに手が届く場所に置いておきましょう。
まずは最低限これだけあれば動ける、というものを以下にまとめました。
普段から一式をバッグに入れておき、定期的に中身と賞味期限を確認する習慣をつけておきましょう。
| アイテム | 備考 |
| ウェットフード(7日分) | ローリングストックで管理 |
| 水(7日分) | 密閉ボトルで保存 |
| 食器(折りたたみ式) | かさばらないものが便利 |
| キャリーバッグ | 後述します |
| リード・ハーネス(予備含む) | パニック時は首輪が外れることも |
| ペットシーツ(多め) | 多用途に使える |
| 消臭袋 | 避難所では衛生管理が特に重要 |
| 愛犬の写真 | 迷子時の捜索用。飼い主と一緒に写っているものも |
| ワクチン接種証明書のコピー | 避難所・ホテル預けの際に必要になることがある |
| かかりつけ動物病院の連絡先 | |
| ウェットティッシュ | 体を拭いたり、手を清潔に保つために |
| 消臭スプレー(ペット用) | 避難所での周囲への配慮に |
| お気に入りのおもちゃやブランケット | においで安心させるために |
フードと水:ウェットフード備蓄の注意点
一般的な防災記事ではドライフードの備蓄が前提になっていることが多いですが、シニア犬や歯の弱い犬、ドライフードの習慣がない犬はウェットフードしか食べられないケースがあります。
うちの子もそのひとりです。
ウェットフードを備蓄するうえで気をつけたいのは、賞味期限の短さです。
ドライフードが1年以上もつものが多いのに対し、ウェットフードは6ヶ月〜1年程度のものも多く、備蓄したまま忘れると期限切れになりがちです。
ウェットフードのローリングストック方法
ローリングストックとは、備蓄品を日常的に使いながら補充していく方法です。
- 現在与えているウェットフードを多めにストックする(目標は7日分)
- 古いものから使い、使った分を補充する
- 月に一度、在庫と賞味期限を確認する習慣をつける
「非常用に別途買う」よりも、普段食べているものを多めにキープする方が、災害時に食べ慣れないフードで体調を崩すリスクも防げて一石二鳥です。
水の備蓄量の目安は、1日あたり体重1kgにつき約50〜60mlを参考にする方法があります。
ただしこれは飲水量の目安であり、ウェットフードを食べている場合は食事からも多くの水分が摂れるため(ウェットフードの水分含有量は約75〜85%)、実際に飲む量はさらに少なくなります。
備蓄としては余裕をもって7日分を確保しておきましょう。
薬と健康情報について
現時点で常用薬がなくても、シニア犬は体調が変わりやすいもの。
かかりつけ医の連絡先、最近の体重、既往症、アレルギーの有無などをメモしてバッグに入れておきましょう。
いざというとき、見知らぬ動物病院にかかる場合にも役立ちます。
マイクロチップの登録情報を確認する
マイクロチップをすでに装着している場合も、登録情報(住所・電話番号)が最新かどうかを確認しておきましょう。
引っ越しや電話番号の変更があった場合、情報が古いままでは意味をなしません。
2022年6月の改正動物愛護管理法施行以降、法定の登録先は環境省が指定した登録機関(公益社団法人日本獣医師会)の「犬と猫のマイクロチップ情報登録」サイトに変わっています。
登録・変更はこちらから行いましょう。
迷子札も併用しておくと安心です。
マイクロチップは読み取り機がなければ確認できませんが、迷子札は誰でもすぐに確認できます。両方あるのが理想です。
避難時のキャリー、選び方と運び方

これが正直、一番の課題だと思っています。
うちの子は5キロ近くありますが、犬の中では決して大きい方ではありません。
10キロを超える中型犬、20〜30キロの大型犬ともなれば、パニック状態で暴れる犬を抱えて逃げることはほぼ不可能です。
ダックスフンドは胴が長いという体型的な難しさもあり、体重が5キロ近くになると、抱えながら避難するのはかなりの負担です。
パニック状態の犬は予想以上に暴れますし、長距離の移動ではなおさらきつい。
さらに、ダックスの腰への負担を考えると「抱っこで逃げる」という選択肢には限界があります。
愛犬の体型に合わせたキャリーを選ぶ
私は持っていませんが、リュック型キャリーなら両手を空けられるので良いのではないかと思います。
ダックスフンドは胴長のため、サイズ選びが特に重要です。
- 内寸の長さが胴の長さより十分余裕があるか確認する
- 扉がロックできるタイプを選ぶ(パニック時に内側から開けてしまう犬もいます)
- 通気性がよいメッシュ素材のものが安心
- 実際に試しに入れてみてから購入するのが確実
今日からできるキャリー慣らし
緊急時に初めてキャリーを使おうとしても、まず入ってくれません。普段から慣れさせておくことが何より大切です。
- キャリーをリビングに出しっぱなしにする
- 中にお気に入りのブランケットやおもちゃを入れておく
- 自分から入ったらおやつで褒める
- 扉を閉めた状態で過ごす時間を少しずつ延ばす
- 最終的には「ハウス」などのコマンドで入れるようにする
強制的に入れるのではなく、「ここは安心できる場所」と覚えさせることがポイントです。
なお、大型犬の場合はキャリーに入れること自体が難しいケースがほとんどではないでしょうか。
その場合は、リードとハーネスを両方装着して歩いて避難することが基本になります。
普段からハーネスに慣れさせておくこと、パニック時でも飼い主がしっかりコントロールできる状態にしておくことが、大型犬の飼い主さんにとっての最重要課題といえます。
在宅勤務でも、外出時の備えは必要です

フルリモートで働いていると、ほとんどの時間を愛犬と一緒に過ごせます。
揺れを感じればすぐそばに行けますし、様子もすぐに確認できます。その安心感は本物です。
ただ、買い物や通院など、外出がゼロではありません。
そしてそのわずかな時間に大きな地震が来ないとも限らない。
「自分がいないとき」のことも、きちんと考えておく必要があります。
室内環境の整備
留守中に愛犬が安全でいられる室内環境を整えておきましょう。
- 本棚・テレビ・棚などの大型家具は壁に固定する
- 愛犬の定位置の近くに落下してくるものがないか確認する
- 窓ガラスには飛散防止フィルムを貼っておく
- クレートやケージを安全な壁際に設置しておくと、揺れの際に愛犬が自ら避難しやすくなります
- ブロック塀や大型家具の近くに犬小屋や定位置を設けないようにする
ご近所ネットワークとレスキューステッカー
信頼できる近所の方に、犬がいることを伝えておきましょう。緊急時に様子を見てもらえる関係を作っておくのが理想です。
玄関ドアや郵便受けに「この家にペットがいます」と示すレスキューステッカーを貼っておくと、救助隊や近隣の方が気づきやすくなります。
100円ショップでも手に入りますし、ペットグッズ専門店では専用のものが販売されています。
犬と避難所で過ごすために知っておきたいこと

避難所に着いてからも、やることは山積みです。
ペットを連れた避難生活は、人間だけの場合とは異なる配慮が必要になります。
事前にルールや環境を把握しておくことで、現場での混乱を減らすことができます。
避難所に行く前に:3つの選択肢を知っておく
大きな地震のあと、避難先は避難所だけではありません。状況に応じて次の3つの選択肢があります。
①避難所への同行避難
自宅が損壊している、または危険な場合の基本的な選択肢。
ペット可の指定避難所を事前に確認しておく必要があります。
東京都内でも、避難所のペット受け入れ対応は区ごとに異なります。
すべての避難所でペット同行避難を受け入れている区もあれば、一部のみの区もあります。
避難所の設置・管理は各区市町村が行うため、お住まいの自治体のホームページで必ず確認しておきましょう。
参照:東京都保健医療局「同行避難するために・日ごろからの備えが大切です」
②在宅避難
自宅が安全な場合は、自宅にとどまる選択肢もあります。
フルリモートで在宅時間が長い場合は、この選択肢を念頭に置いて備蓄を厚めにしておくことが特に重要です。
③車中避難
ペット可の避難所が近くにない場合、自家用車での避難生活になるケースもあります。
その際は熱中症に要注意。
季節を問わず日中の車内温度は高くなります。こまめな換気と水分補給を心がけ、犬だけを車内に残すことは避けましょう。
どの選択肢をとるかは状況次第ですが、「どうなったらどうする」をあらかじめ家族で決めておくと、いざというとき動きやすくなります。
ペットの受け入れ状況を事前に確認する
避難所がペットを受け入れているかどうかは、自治体によって大きく異なります。
残念ながら、すべての避難所がペット可なわけではありません。
お住まいの自治体のホームページや防災マップで、事前に確認しておきましょう。
もし最寄りの避難所がペット不可であれば、親戚・友人など預け先の候補を複数考えておくことが必要です。
避難所でのルールを事前に把握しておく
避難所では多くの人が共同生活をします。
動物が苦手な方やアレルギーのある方もいます。
ペットスペースは人間の居住エリアとは分けられることがほとんどで、同じ空間で過ごすことはできないと思っておいた方がよいそうです。
- 排泄物はすぐに処理し、消臭袋に入れる
- 無駄吠えが続く場合は周囲に配慮した対応をする
- ほかの犬や人に近づきすぎないよう管理する
こうしたマナーを守れるかどうかは、普段のしつけにかかっています。
「お座り」「待て」「ハウス」といった基本コマンドが入っているだけで、避難所での生活はかなり違ってきます。
犬のストレスをできるだけ減らすには
避難所は、犬にとっても極度のストレス環境です。
慣れない場所、知らない人と動物の気配、騒音。これらは犬の心身に大きな負担をかけます。
過去の大きな地震では、精神的ストレスによる消化器系のトラブルが多く見られたという記録もあります。
- 食欲が落ちていないか、こまめに確認する
- 普段使っているブランケットやおもちゃを持参し、においで安心させる
- できるだけスキンシップと声かけの時間を作る
- いつもと様子が違う場合(元気がない、下痢、食欲不振、無駄吠えが増えるなど)は早めに動物病院へ
記事のまとめ

在宅だから大丈夫、とどこかで思っていました。
でも最近は地震が多く、「一緒にいるだけでは足りない」と気づきました。
いざとなったとき、5キロ近いこの子を抱えて動ける準備が、まだできていない。
まず今週末、ウェットフードの備蓄とキャリーの見直しからはじめようと思っています。