Moonchild、メロウネスを深化させ、バンドの成熟を感じさせた極上のグルーヴ 東京公演のライブレポートを公開

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Moonchild、メロウネスを深化させ、バンドの成熟を感じさせた極上のグルーヴ 東京公演のライブレポートを公開

Moonchild @ EBISU GARDEN HALL 11 / 7 (MON)>

スペシャルゲストのキーファーがヌジャベスのカヴァーを含む泣けるプレイで沸かせたのに続き、恵比寿ガーデンホールのステージにムーンチャイルドが登場した。エンジン点火とカウントダウンをイメージしたイントロダクションが期待を高め、『What You Wanted』からスタート。『Get by』では早くもリズムに合わせてフロアから手拍子が起こる。アンバー・ナヴランのヴォーカルを中心に、カラフルなキーボードの音色そしてメンバーそれぞれが自在に操るホーンにより、最新アルバム『Starfruit』の世界を再現していく。『Starfruit』は多くの女性アーティストをフィーチャーすることで、音のパレットを広げ新たな扉を開いていったが、この夜のパフォーマンスでも、とりわけ柔らかなサイケデリック・ソウル『Too Good』などで、バンドの持ち味であるメロウネスを深化させたことが手に取るように伝わってくる。

アンドリス・マットソンがアコースティック・ギターに持ち替え開放感溢れる「Too Much To Ask」からそのままブリージンな「The Other Side」へ。そして甘いホーンの響きがたまらない「Money」と、アルバム『Little Ghost』の曲が続く。

アンバーがバンドのグルーヴを支えるサポート・ドラマー、イーファ・エトロマ・ジュニアを含むメンバーを紹介し「楽しんでますか?」と日本語でオーディエンスに語りかける。セットの中盤に差し掛かると3人は椅子に腰掛け、過去曲のリミックス・バージョンと言えるアコースティック・アルバムに取り組んでいるという彼らはそのアレンジをいち早く披露くれたのだが、この名盤『Voyager』メドレーがまたとろけそうな仕上がり。「Change Your Mind」が始まると客席から声にならないため息が漏れる。アンバーが「一緒に歌える?」とオーディエンスに呼びかける。

後半は再び『Starfruit』の世界へ。アンバーのハイトーンが突き抜ける「You Got One」、スケールの大きなアレンジメントがエモーションを掻き立てる「6am」を挟み、ゆったりとファンキーな「Tell Him」、アンバーのハイトーンに喝采が起こる。さらに「ダンスするのに最高なチューン」というMCのあと、ファンキーなベースラインの「Love I Need」。アンバーの「手を上げて!」の声にフロアも応え、会場の一体感が高まる。華々しく曲を終えると、アンバーがスタッフへの感謝を述べ、「The List」の出だしのヴァース〈I hate you make me nervous〉を歌い始めると歓声が巻き起こり、客席の熱気が沸点に到達する。かつてのライヴで伺えたナイーブな面影は薄らぎ、ステージを所狭しとエネルギッシュに動き回り、オーディエンスとのコミュニケーションを図ろうとする姿には、コミュニティを大切に活動を続けてきたバンドの成熟を感じさせた。
鳴り止まないアンコールの拍手に応えメンバーが再び登場。アンドリスが「もう一曲?」と日本語で言い、演奏されるのは「Come Over」。イントロから手拍子が起こる。軽やかなグルーヴの上で、マックスのサックス、アンバーのフルート、アンドリスのトランペットとソロを繋いでいくホーン・アンサンブルをあらためて堪能することができたのは嬉しかった。最後はステージ前方で4人が肩を組み、オーディエンスへ感謝を伝え幕を閉じた。

ムーンチャイルドの音楽はチルアウトと形容されることが少なくないが、心地よく体が揺れるしなやかな極上のグルーヴをスタンディングの会場で味わうのもまた格別だった。彼らのライヴには、決して突拍子もない非現実ではなく、日常と地続きの楽園を味わう場と言おうか、そんな気持ちよさがある。老若男女でぎっしり埋まったフロアの多幸感に加え、終演後に「The List」を口ずさみながら会場を後にする観客をちらほら見かけたことからも、ムーンチャイルドの音楽が愛される理由が垣間見れれた。

Text by 駒井憲嗣


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