まんまるリンゴに思いを託して。雪国リンゴ・カンパニー「リンゴリらっぱ」
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まんまるリンゴに思いを託して。雪国リンゴ・カンパニー「リンゴリらっぱ」

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あか・あお・きいろ。

いいえ、信号ではありません。チューリップの歌でもありません。“リンゴ”です。

実はリンゴには数多くの品種があります。日本国内で栽培されているものだけでも、その数はおよそ2000種類です。艶やかな赤色が目を惹く、ふじやサンふじ。

青リンゴの代表格・王林。まぶしい夕日のような、シナノゴールドやぐんま名月。実りの季節になると、色鮮やかな果実が農園を彩ります。

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山形県有数の豪雪地帯・最上地域に、1軒のリンゴ農家があります。その名も「リンゴリらっぱ」。

彼らは、ジュースやシードルに使う“加工用リンゴ”のみを育てています。 

今回は遠藤拓人さん(リンゴリらっぱ/農場長)に、ユニークな名前に負けずとも劣らない「リンゴリらっぱ」独自のものづくりについてお話を伺いました。

−「リンゴリらっぱ」について詳しく教えてください。

僕たち「リンゴリらっぱ」は、加工用リンゴ約50種類を育て、ジュースやシードルを作り、販売しています。メンバーは、代表の佐藤と僕、もうひとりの社員。収穫などを手伝ってくれるパートさんを含めると、約10名ほどですね。

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−リンゴは“冬の果物の代表格”というイメージです。

それはお歳暮用に購入される方が多いからかもしれませんね。でも実はリンゴって、夏場でも採れるんですよ。リンゴリらっぱは、8月から11月が収穫時期にあたります。うちで育てている「さんさ」も、夏に旬を迎えるリンゴです。

最上地域って、県内で最も雪が降るエリアなんです。11月頃から積もるほど降って、真冬には1、2mの積雪もザラ。雪の重みに耐えきれずに枝が折れる木があったり、果樹農家をやるにはなかなか大変な場所。それもあってか、このへんでリンゴ農家はうちだけですね。

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−リンゴリらっぱでは、年間どのくらいの量のリンゴが採れるんですか?

収穫量は、年間約20トンです。その9割以上をジュースやシードルに加工し、販売しています。

−加工用リンゴのみを栽培し、ジュース等を製造販売するのは、リンゴ農家としてはかなり珍しいのでは?

そうかもしれませんね(笑)僕たちが加工用リンゴのみを栽培するようになったのには、理由があります。

リンゴリらっぱの前身は、代表・佐藤の祖父母がやっていた果樹園「荒井りんごや」です。1927年の創業以来、地元のお客様のために生食用リンゴを作り続けてきました。お客様から「こんな味のリンゴが欲しい」とリクエストがあれば、新たな苗木を植え、コツコツと品種を増やしてきたそうです。

2017年、荒井りんごやを率いてきたお祖父さんが亡くなりました。そして、孫の佐藤が跡を継ぎ、僕も事業に加わりました。

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佐藤春樹さん(リンゴリらっぱ代表/写真左)と遠藤さん(写真右)


当時の僕らには、リンゴ農家としての経験もノウハウも一切ありませんでした。園地と木だけはあるけれど、ほとんどゼロスタートに近い(笑) 素人同然の僕らがリンゴ農家になって、まずぶち当たったのは「これっておかしくない?」というギモンでした。

リンゴ農家の命運は“お歳暮”にかかっています。夏や初秋に直売所で売るリンゴは、ほとんど利益が出ない。そのぶん、お歳暮の時期には割高で販売します。

お歳暮のリンゴは、“贈り物”です。そのため、真っ赤でぴかぴかのリンゴが重宝される。その綺麗なリンゴを作るには、大量の農薬を使用しなければなりません。これはリンゴ農家ではごく当たり前のことです。

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未熟だった僕らには、この“リンゴ農家の常識”が理解できませんでした。「採算がとれないからといって、農薬をたくさん使うのは果たして良いのだろうか?」と。農薬とは、いわば殺虫剤です。虫を殺す薬剤は、人が吸い込んでいいもんじゃない。

色々と考えた末、僕らは「環境に負荷をかけない、安全で持続可能なリンゴ栽培」をしようと決めました。加工用に的を絞れば、リンゴの見た目にこだわらずに済む。だってジュースやシードルにしてしまえば、かたちや色も関係ありませんから。

それから僕たちは、農薬を極力使わず加工用リンゴのみを栽培する「リンゴリらっぱ」になりました。

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絵しりとりのようなロゴは、イラストレーター「100% ORANGE」によるデザイン

−たしかに、加工してしまえば味のみで勝負できますね。荒井りんごやからリンゴリらっぱになり、他に変化はありましたか?

育てる品種が増えましたね。荒井りんごや時代は、生食用品種を中心に20種類ほど栽培していました。リンゴリらっぱになり、新たに加工用品種を植えました。

リンゴは、苗木が育って実をつけるまで最低でも5年はかかります。まだ実をつけていない木もたくさんありますよ。

−加工用品種のリンゴは一般家庭ではあまり馴染みがありません。どんな品種、特徴があるんですか?

加工用品種でポピュラーなのは「紅玉」です。酸味が強く、皮と一緒に煮ると鮮やかに色づきます。ジャムやアップルパイ、リンゴジュースに最適なリンゴですね。

最近は「グラニースミス」「グラムリー」も加工用として出回るようになりました。いずれの品種も、加工した際に味がしっかり残るのが特徴です。また、そのまま食べると酸っぱい(笑)

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これらの他に、醸造用品種もあります。主にシードルに使われますね。酸味だけでなくビターな渋みが特徴です。

シードルは、甘いだけ・酸っぱいだけでは物足りません。ほどよい苦味が加わると、ドライで奥行きのある味わいに仕上がるんです。

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紅玉をベースに、紅月・ジョナゴールドなどの酸味が強い品種をブレンドした「紅玉ブレンド」

−リンゴリらっぱのジュースは、農園を受け継いだ当初から作っていたんですか?

そうですね。園地もリンゴの木もそのまま受け継いだので、一部のリンゴはその年から収穫できました。

現在6種類のジュースを製造販売していますが、「ふじリンゴジュース」「さんさブレンド」「ほくとブレンド」「紅玉ブレンド」は、最初から作っていました。

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グレープフルーツのような爽やかな苦味が特徴の「にがむしブレンド」

−「にがむしブレンド」は名前も味の特徴もユニークだなと思いました。

これはリンゴの栽培方法を模索している段階で生まれた商品です。

初夏の頃、リンゴは「摘果」の時期を迎えます。摘果とは、株についた小さな実を中心の1つを残して摘み取る作業です。栄養を1つの実に集めれば、綺麗で美味しいリンゴができる。

でも野生のリンゴって、誰も摘果しなくても元気に生えているんですよね(笑) 

僕たちは「自然のままに成らせたら味はどうなるんだろう?」と、好奇心の赴くままに試してみることにしました。一部の木は摘果もせず、手を加えるのを最小限にしたんです。

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©︎Kohei Shikama 

そのリンゴの木は、無事に実をつけてくれました。面白いのは、実の色づき・甘み・渋みがまばらになること。甘い実もあれば、青っぽくて渋い実もある。熟すタイミングがひとつひとつ違うので、1本の木から色々な味のリンゴが採れたんです。

その実を一緒に絞ってジュースにしたら、複雑な味わいが際立つリンゴジュース「にがむしブレンド」ができました。一般的なリンゴジュースに比べて糖度も低いので、まさに“大人のリンゴジュース”ですね。

−その木の個性が表れたリンゴジュースですね。

「にがむしブレンド」だけでなく、他のジュースも個性的ですよ。

リンゴリらっぱのジュースは、基本的に“同じ時期に採れたものを一緒に絞って”います。9月に採れたものは9月に、10月に採れたものは10月に。同時期に採れたさまざまな品種を一緒に絞ることで、その季節らしい味わいのリンゴジュースになる。

その年の収穫量も品種ごとで異なるため、ブレンドの割合も毎年違います。酸味・甘み・香りのバランスを見つつ、比率を調整しています。

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甘み豊かな数種のリンゴをミックスした「ほくとブレンド」


僕たちは一般的なジュースメーカーさんとは違い、限られた農地の中で、そのとき採れたリンゴで勝負するしかありません。今年は採れた品種でも、来年になったら採れないこともある。これも自然に寄り添ったリンゴづくりだからこそです。

その時々の個性が表れた美味しいリンゴジュースを作り続けていれば、これがリンゴリらっぱの味になるのかな、と思っていますね。

−リンゴリらっぱは、これからどんなものづくりをしていきたいですか?

将来的には、クラフトサイダーを自家醸造したいですね。現在取り扱っている商品は、設備などの都合上、酒造メーカーさんの委託醸造なんです。リンゴ農家の強みを生かした、リンゴ果汁100%の酒作りができたらいいなと思っています。

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あとは、リンゴ農家を志す若者たちのモデルケースになりたいですね。僕たちが“お歳暮のぴかぴかリンゴ”にギモンを持ったように、リンゴ農家では常識とされていることを不思議に思う人たちも少なくないと思うんです。

綺麗なリンゴを作ろうと農薬に年間数百万円をかけても、台風で実が落ちてしまえば大赤字になります。サステナブルな考え方が主流になりつつある今、「環境負荷は当たり前、リスクを背負うのも当たり前」では、いつかリンゴ農家をやりたいと思う人がいなくなるんじゃないかな、と。

多くのリンゴ農家さんから見れば、僕たちがやっていることは常識ハズレかもしれない。でも間違った選択じゃない。見た目に囚われないだけでリンゴ作りの可能性がさらに広がることを、いつか僕たちが証明したいですね。

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©︎Kohei Shikama 

(了)

取材・文/佐藤優奈

◉ リンゴリらっぱ


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Sato Yuna

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