私たちがまだ知らないアート盆栽。東京盆栽生活空間
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私たちがまだ知らないアート盆栽。東京盆栽生活空間

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ビルが立ち並び、首都高や線路が複雑に絡み合う東京には、「コンクリートジャングル」という言葉がまさにふさわしい。無機物に囲まれた生活の中で、“自然と触れ合わない日々”がすっかり日常になっている人も少なくありません。

都会で忙しなく過ごす現代人に、盆栽で癒しを提供する植物ブランドがあります。

その名も「東京盆栽生活空間」。

「盆栽をもっと『身近』に、もっと『生活』の中に」をコンセプトに、斬新なデザインが目を引く「アート盆栽」から、育てやすい手のひらサイズの「MICRO BONSAI」など多彩なプロダクトを展開しています。

今回は「東京盆栽生活空間」の中島大輔さん(主宰)に、盆栽と植物の魅力について教えていただきました。

―中島さんの盆栽の斬新なデザインとアート性に驚かされました。

ありがとうございます。盆栽って「1つの鉢に1本の樹木」と思われがちですが、本来は自由に楽しむものなんですよ。

盆栽は平安〜鎌倉時代に中国から伝来したといわれています。当時は「盆景」といって、樹木の他に、石や砂などを使って、鉢の中に自然の風景を再現する娯楽の一種でした。私が作品に建物模型や仏像、動物の骨などのモチーフを取り入れたのには、そういった原点回帰の意味も込められています。

SKULL BONSAI(スカル盆栽)

―原点回帰した結果、従来の盆栽のイメージと大きく異なる作品になったのは面白いですね。

皆さんがイメージする渋い雰囲気の盆栽って、「禅の精神」によって確立したものなんです。

たった1本の樹木だけで、その背景や景色全体を想像させる。例えば枝の表現では、斜めを向いていたら“風になびいている”。下に垂れていたら“崖の上に生えている”。

盆景が日本で禅と出会い、研ぎ澄まされた結果、「樹木1本で見えないものを表現するのが盆栽」という定義が出来上がったのです。

もちろんそういった盆栽も素敵ですが、やはり取っ付きにくさを感じる人もいます。だから私は、あえて作品に新しい要素を取り入れています。デザイン性の高い作品がひとりでも多くの方の目に止まって、盆栽に興味を持つきっかけになればいいなと。

CLIFF BONSAI(断崖盆栽)

―中島さんは以前、盆栽園や植木屋などで働いていたんですか?

いえ、私はもともとテレビ番組のディレクターや書籍のプロデュースをしていました。マスコミ関係の仕事って、昼夜関係なく忙しい。そんな中で日常生活に癒しを求めて始めたのが盆栽です。趣味として楽しむうちに、盆栽の魅力をもっとたくさんの人に広めたいと思い、2017年に「東京盆栽生活空間」を立ち上げました。

盆栽って敷居が高いと思われがちなんですよ。「おじいちゃんの趣味」「育てるのが難しそう」とか(笑) 手がかかるといえば、毎日の水やりくらいなんですけどね。

かつての私のように、時間に追われている人ほど盆栽を趣味にしたらいいと思うんです。植物を生活に取り入れると、四季を感じられますし。春夏秋冬で姿かたちが変わりますからね。

―たしかに。植物は季節や時間経過によって、違った表情を見せてくれますね。だからこそアート作品にする難しさもあるのでは?

まあ思い通りにはいかないですね(笑) 植物は成長するし、時には枯れてしまうので。

そもそも植物って、同じ種類でもそれぞれかたちが違いますよね。だから頭の中で「こういうモチーフとこの樹木をこう組み合わせたいな」とイメージしても、ぴったりマッチする理想の植物なんてまず見つからないんですよ。

私が作品作りをする際は、植物を中心に考えるようにしています。例えばこの作品は、たまたま見つけた盆栽用の桜から着想を得ました。

「花の便り~春は巡りくる」(桜/ドライフラワー)

1本の桜の木が、まるで羽ばたく鳥のように見えたんですよ。「じゃあ翼をつけてみよう」と、色とりどりのドライフラワーを両翼にあしらいました。

このように想像力を掻き立てる植物との巡り合いもアート盆栽の楽しさのひとつです。

―アイデアの源について聞かせてください。「BUDDHA BONSAI(仏像盆栽)」は、まるで数百年前からずっとそこにあったかのような存在感がありますね。

これはタイのアユタヤ遺跡にある「菩提樹の仏頭」をモチーフにしました。アユタヤの実物は数十メートルほどの樹木なので、ミニチュア版ですね。

BUDDHA BONSAI(仏像盆栽)

私が作品を作る上での大きなテーマは“時間”です。

盆栽の樹木って、育てるのに時間がかかる。5㎝ほどのサイズになるまで5、6年かかったりします。気候や風土に合わせてゆっくりと成長していくんです。

1本の樹木が作品になるまでの“時間”を楽しみ、出来上がるまでの“時間”も含めて愛でる。「BUDDHA BONSAI(仏像盆栽)」では、そういった時間経過そのものを表現しました。

仏教国のカンボジアでワークショップを開催した際も、現地の子供たちに仏像と樹木を組み合わせた盆栽の作り方をレクチャーしたら好評でしたね。

―盆栽は世界各国でも人気が高いカルチャーなんですか?

「BONSAI」で通じるくらい、世界中に愛好家がいます。

例えば日本文化に親しみがあるヨーロッパ各国では、盆栽はとてもポピュラーです。パリの街中にも盆栽店がありますし、イタリアでは「盆栽大学」というカルチャースクールも人気です。スペインにも有名な盆栽園がありますね。

盆栽発祥の地・中国にもコアなファンがたくさんいます。同じアジア圏のタイやベトナムでは、盆栽が独自の進化を遂げていて面白いですね。

―同じ盆栽でも、植物や楽しみ方に地域差がありそうですね。

植物の違いでいえば、やっぱり東南アジアの植物は大きく成長するものが多いですね。

ベトナムの盆栽「ホンノンボ」は迫力があって面白いですよ。背丈くらいある大きな樹木を2m×3mくらいのでっかい鉢に植えるんですよ。もちろん室内には飾れないから、だいたいが庭先に置いてありますね。もう私たちが知っている盆栽とはスケールが違う (笑)

世界中を見渡せば、まだまだ知らない盆栽がたくさんあります。その出会いも楽しみですね。

―中島さんは「東京盆栽生活空間」の活動の他に、水耕栽培植物のブランドも運営されているんですね。

昨年、水耕栽培植物を専門に販売するブランド「WOOTANG」(ウータン) を立ち上げました。

盆栽にまつわる活動をする中で、皆さんが植物を育てるのに2つのハードルを感じていると気づいたんです。

1つ目は「水やり」。鉢植えは土の性質に合わせて、適正な頻度で水やりをする必要があります。これを手間と思う人も少なくありません。

あとは「置き場所」です。盆栽に使われる樹木は、山に自生する木と同じなので、屋外に置かなければなりません。都会に暮らしていると、庭やベランダがない人もたくさんいますよね。

これらの理由から生活に植物を取り入れられない方のために、“毎日の水やりが不要”で“室内に置くことに特化した”水耕栽培植物を開発しました。現在、約20種類の植物を扱っています。

WOOTANGのコンセプトは「家の中に小さい森を育てましょう」

初心者さんでも安心してご購入いただけるよう、室内の明るさを計測できるアプリを使って、一人一人の環境に適した植物を提案したり「3週間の枯れ保証」なども提供しています。中には枯れるのが怖くて尻込みしてしまう方もいますから。「WOOTANG」が植物を楽しむ初めの一歩になればいいなと思っています。

―植物とガラス器の取り合わせも涼やかですね。

そうですね。シンプルなガラス器なので、塗料でペイントしたり、各々が好きにアレンジして楽しめます。

今年の2月にはガラス作家さんたちに「植物のためのガラスの器」をテーマに、作品を作ってもらうコラボイベントも行いました。今後も様々なアーティストとタッグを組んで、“植物×アート”の可能性を広げていきたいですね。

―今回の取材を通して、植物がある生活の豊かさを感じました。

植物を扱っていると、「全てが人間の思い通りにはならない」と感じる瞬間があります。水やりや置き場所など、人間が植物に合わせなければなりません。でも植物には、世話の手間にも勝る、成長の喜び・豊かさ・癒しがあります。

古来より、植物は人間が生きる上で重要な役割を果たしてきました。山に生える植物によって地中に水が蓄えられ、その水が川となって、果ては人間の飲み水になる。人間は水がなくては生きていけませんから、植物は私たちの営みになくてはならない存在なんです。

植物がある生活を通して、こういった自然環境の大切さも知っていただけたらうれしいですね。

(了)

取材・文 佐藤優奈


東京盆栽生活空間 https://tokyobonsai.jp/

WOOTANG  https://wootang.jp/


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Sato Yuna

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