「TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.」 2022 秋冬コレクション

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「TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.」 2022 秋冬コレクション

THE ERA

ルールに囚われることなく、自由に、カラフルにメロディーを奏でていた1960年代後半のアメリカを生きた黒人たち。中でも本コレクションにおいて最も重要な役割を果たしていたのが、ビートルズの「5番目のメンバー」と形容されることもあるビリー・プレストンです。彼らの創り出したカラフルな音楽や装い、ファッションへの真摯な眼差しから大きな影響を受けた2022年秋冬コレクション「THE ERA」。そこには宮下自身が捕らえようとしても捕らえることのできない、今この時代への複雑な想いが表現されています。

「洋服に着る順序なんてあるのだろうか?」。以前から宮下が持ち続けていたそんな疑問と対峙することから、多くの新しい洋服が生まれています。通常はバックにくるものがフロントへと配置された、バックリバース仕様に見立てた洋服が数多く登場します。1960年代を強く意識したブラックスーツ、オッドベスト、ラッフルシャツ、多様なセーター、パファーベストや6ポケットジーンズ。黒と白をベースにしながらも、黒人たちのフェイバリットカラーの数々が、コレクション全体を鮮やかに彩ります。「物凄くカラフルなメロディーでした。ブラックスーツでさえも、どこかカラフルに映るように創ったのかもしれません」と宮下は語ります。

歩いている姿だけではなく、自転車に乗っている前傾姿勢の姿をも考慮することから生まれたバルーンシルエットの洋服もまた、今シーズンを代表するものです。フロントの丈は短く、バックの丈は長く設定することにより、球体のようなシルエットを創出。MA-1、B-3、ブレザーやダッフルコートなど、見る角度によって大きく景色が変容するものへと仕上がっています。バックを対角線状に横切るジップや、右腰の裏側に潜む大きなポケットも特筆すべきディテールです。

2021年秋冬コレクション以来の映像作品発表となった今シーズン。ライブをやめてしまった後の、編集を駆使してアルバムを創り上げていた頃のビートルズの姿になぞらえて、同様の手法を映像制作へと取り入れています。またヴォーカルを入れた歌までをも制作。宮下が書き留めた散文やワードを紡ぎ合わせることによって誕生した歌詞もが組み込まれた、本格的な音楽作品へと昇華されています。

「洋服にはある程度の無駄は必要」と語る宮下。「必要ないものが必要ない」という昨今の考えに対しての懐疑的な姿勢は、人種、性別、年齢などを超越し、全ての”カラー”の人たちに向けた宮下なりの今シーズンの服作りへと帰結するのです。


TAKAHIROMIYASHITATheSoloist. Autumn / Winter 2022 collection. The ERA

TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.


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