人も世代も飛び越えて 着物文化を未来へつなぐ キモノフク
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人も世代も飛び越えて 着物文化を未来へつなぐ キモノフク

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約1000年前から伝わる日本の伝統的な衣装「着物」。洋装がすっかり定着した今、成人式や結婚式など、「着物=ハレの日の装い」と考えている人も少なくありません。しかし、かつては私たちの日常に欠かせない存在でした。

季節にあった着心地の良い素材を身にまとう。

多種多様な色や柄で自分を表現する。

寸法を直し、弟妹へゆずる。

このように、着物は私たちの生活に寄り添う普段着としての一面も兼ね備えています。

「キモノフク」では、着物の魅力と本来のあり方を伝える着物リメイクサービスを提供しています。

今回は「キモノフク」を運営するTSURUTOの宇波滉基さん(クリエイティブディレクター/写真左)、大方知子さん(チーフプロデューサー・アートディレクター/写真右)にお話を伺いました。

—「キモノフク」について詳しく教えてください。

大方さん:「キモノフク」は、和の美しさを現代に寄り添うカタチで表現した着物リメイクサービスです。「サイカイの衣」「イッテンの衣」の2つを軸に展開しています。

「サイカイの衣」では、お客様からお預かりした着物のセミオーダー・リメイクを行なっています。セミオーダー・リメイクとは、こちらが用意した既存のパターンからお客様にお好みのものを選んでいただき、ワンピースやシャツ、スカート、小物類などに仕立て直すサービスです。

サイカイの衣(イ)

一方で、「イッテンの衣」はこちらがセレクトした着物をリメイクして販売しています。

着物には様々な柄や質感があるので、それぞれが輝くパターンを選び、仕立てています。着物1着から取れる生地は限られるので、ワンピースもシャツも自ずと一点モノになりますね。

イッテンの衣(イ)

—なぜこのようなサービスを立ち上げたのですか?

宇波さん:着物がハレの日だけのものと認識され、服として日常的に着られないと、文化がそこで途絶えてしまいます。ファストファッションが主流の世の中で、着物がどんどん廃棄され、リサイクル業者に流れてゆくのをただ見つめているのはつまらないと感じていました。

アンティーク着物は、いずれも柄や織り、素材が多様で、魅力的なものばかりです。エジプト柄とか、面白いものもあるんですよ。私自身、「こんなにかわいいなら普段から着たいな」と(笑)

「キモノフク」はパターンオーダーなので、数万円からご注文いただけます。「オシャレを楽しむ時に、和のエッセンスが詰まったものを取り入れたい」と思っている方も気軽にご利用いただけると考えました。

大方さん:私も以前は、着物に対してテレビCMで見るようなイメージしかありませんでした。成人式の振袖、みたいな。でも知れば知るほど、着物ってすごくかわいい。色々な要素が入り混じった、日本の美学が詰め込まれたものなんだ、といつも驚かされます。たくさんの着物に触れて、これが身近に楽しめたらライフスタイルがとても豊かになると思いました。

「キモノフク」では、カジュアルなスタイルの着物リメイクを提案しています。着物は敷居の高い文化ではなく、日常的に楽しめるものだと知って欲しいですね。

—どんな方からのオーダーが多いですか?

大方さん:オンラインストアをオープンしてから、「サイカイの衣」をオーダーされるお客様が増えました。

パターンに女性ものが多いので、女性が7、8割ほどでしょうか。年齢層は20代から60代までさまざまです。「お母さんやおばあちゃんから譲り受けた着物をリメイクしたい」とオーダーをいただくことが多いですね。

もちろんメンズもオーダーOK。着物がスタイリッシュなハーフパンツやシャツに生まれ変わる。

—「リメイクして着続けたい」「捨てたくない」など、サイカイの衣をオーダーされるお客様は、思いの詰まった1着をリメイクされるんですね。

大方さん:そうですね。ご家族の形見の着物をお預かりすることも多々あります。

以前、黒紋付の着物をリメイクして欲しいというオーダーがありました。その黒紋付は、お客様のおじいさまが「自分が亡くなったら孫にこれを着て見送って欲しい」と仕立てたものでした。お客様(=お孫さん)は、「祖父の葬儀の際、兄弟みんなで着た着物が生まれ変わってうれしい」とおっしゃっていました。

宇波さん:形見だからこそ、生まれ変わった時の喜びはひとしおかもしれませんね。

亡きお母さまの浴衣をワンピースにされた方がいました。普段は着ない浴衣をどうすればいいのか悩んだ挙句、パッと思いついたのが布ぞうりだったようで。「キモノフクさんに出会っていなければ、危うく母の浴衣が布ぞうりになっていたところでした」とお礼のご連絡をいただきました。

布ぞうりは古布を編んで作るので、ワンピースのあとでも作れます。着物がワンピースになり、布ぞうりになる。サイクルの段階を増やせば、ものの寿命が延びます。ただ捨てられるだけの着物が1着でも減ればうれしいです。

—図柄が特徴的なものや傷みがあるものなど、扱いが難しい素材もあるのでは?

宇波さん:アンティーク着物の生地は、固さやハリ、しなやかさなど状態が様々です。それに対応できる、リメイク経験が豊富な方に腕をふるっていただいています。

大方さん:着物リメイクには「素材の状態チェック」「ほどいて反物に戻す」「洗う」など、特殊な工程がいくつかあります。「洗っても耐えられる素材か見極める」のは、普通の服作りにはない観点ですよね。

糸も素材にあったものを1着1着セレクトしています。元々の着物の柄も、なるべく活かせるよう、配置を考えて裁断・縫製しなければなりません。

まさに量産型の対極ですね(笑) すごく非合理的かもしれませんが、お客様の思いや地球環境に配慮したものづくりには必要なことだと思っています。

宇波さん:まだ構想段階ですが、いつかシミに刺繍を施すサービスも提供したいですね。シミがついたアンティーク着物でも生地状態がいいものはたくさんあるので、着続けたい方が少しでも長く愛用できるように、手を加えていきたいなと思っています。

—お話を伺う中で、「キモノフク」の根底にはエコロジーな考え方があるのだと感じました。

大方さん:学生の頃から、ファッションとエコロジーを結びつけた取り組みに興味を持っていました。

以前、古着を活用したアクセサリー作りも企画しましたが、アップサイクルだけでは根本的な問題解決にはつながらないと痛感しました。まずは「目の前のものを大切にする」という意識の転換が必要だなと。

突き詰めて考えるうちに「日本には昔から、ものを大切にして自然に寄り添う文化があったじゃないか」と思いつきました。中でも着物は、“くり返し使う”の象徴です。長方形の反物が着物になって、サイズを直してお下がりにして、最後には布ぞうりや赤ちゃんのおむつになる。環境に配慮したライフスタイル・ファッションそのものですよね。

そういったエッセンスを現代に合ったカタチに再構築して、若い世代に伝えていきたいと思ったんです。日本のものを大切にする文化に着物の美学を添えて、ファッションを愛する方々に価値観を見直す機会を提供し続けたいですね。

—今後の展望について教えてください。

大方さん:日本文化は、外国文化と触れ合うことで進化してきました。現代にも続く、日本の素晴らしい伝統工芸品の個性や良さ、職人独自の持ち味を広く発信することでさらに磨かれていくと感じています。

私たちの社名「TSURUTO」は、「鶴が渡る」という意味です。日本の伝統的なおめでたいモチーフ・鶴が、日本文化を伝えていく架け橋になって欲しい。そんな思いを込めました。素晴らしい日本文化を、国境や世代も飛び越えて、世界中へ、次世代へ伝えていきたいですね。

宇波さん:アンティーク着物の図柄や織りを見ると、色んな国の多様な文化が入り混じっているとよくわかります。中には、前合わせに着て、帯を締めていなければ、一見それが着物だとわからないものもたくさんあります。それもまた面白さのひとつですよね。

時を経て、様々な人の手を渡り、「キモノフク」で生まれ変わった1着が、次の誰かの琴線に触れるものになっていたらいいなと思いますね。

(了)

取材・文 佐藤優奈


TSURUTO キモノフク https://www.tsuruto-online.com/pages/kimonofukuorder


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