滑らかで優しい虹色に。GUCCIアレッサンドロ・ミケーレのファッション産業におけるレインボープライドをシームレス化する試み
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滑らかで優しい虹色に。GUCCIアレッサンドロ・ミケーレのファッション産業におけるレインボープライドをシームレス化する試み

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目次

  1. 古典的男らしさ論「トキシック・マスキュリニティ」
  2. ジェンダー・バイナリーとセクシャリティ・マイノリティ差別の関係性
  3. 現代のファッション界におけるジェンダーレスのパイオニア、アレッサンドロ・ミケーレ
  4. 新生GUCCIと世界を先導するジェンダーレスな2015-16AWコレクション
  5. 単に性差を無くすのとは違う、ミケーレ流のジェンダーレスは「潜在的存在を見出すこと」
  6. ミケーレGUCCIをオリジンとして始まったファッション界のジェンダー改革
  7. ミケーレのレインボープライド、あなたのレインボープライド

Styles wears a Gucci jacket and dress.Photographed by Tyler Mitchell, Vogue, December 2020

ワン・ダイレクション (One Direction) のメンバーでソロシンガーとしても活躍するハリー・スタイルズ (Harry Styles) が表紙を飾ったVOGUE誌12月号。

VOGUEアメリカ版創刊127年の歴史上で初めての男性の単独表紙となり、GUCCI 20-21年秋冬のジャケットとドレスを纏ったハリーのジェンダー・ニュートラルな姿は賛否両論、物議を醸した。「トキシック・マスキュリニティ (Toxic Masculinity) 」に関する議論も繰り広げられることとなり、世界的なニュースにまで展開された。

これは、ファッション界のみならず世界全体に漂う、ジェンダー・バイナリー(性差)についての問題を浮き彫りにしている。

「男は男らしく」という社会的プレッシャーを「トキシック・マスキュリニティ」と呼ぶ。日本語では「有害な男らしさ」と訳される。昨今この「トキシックマスキュリニティ」が問題視されつつあるのだ。

古典的男らしさ論「トキシック・マスキュリニティ」

キャンディス・オーウェンズ 公式twitter

保守派のコメンターとして著名なキャンディス・オーウェンズ (Candace Owens) は、Twitterでハリーのドレス姿の写真を添付したVOGUEのツイートを引用し、「強い男性なくして生き残った社会などない。男らしい男性を取り戻せ」と批判。

これに対し、オーウェンズが言う“男性は強くあるべき”という考えが 「トキシック・マスキュリニティ」の典型的な例であるという反論が発生。議論が展開されることとなったのだ。

しかし、今回物議を醸したVOGUE12月号の誌面インタビューでハリー・スタイルズは「『男性のための服があって、女性のための服がある』っていう障壁さえ取り除けば、言うまでもなく、楽しむことのできる領域が広がることになる」とファッションについての持論を繰り広げていた。

ハリーは“男性らしさ”という概念を否定したり塗り替えようとしたためにドレス姿を披露したのではなく、実際はただ単にメンズ・ウィメンズという性差を無くせば、ファッションはもっと楽しくなるということを伝えたかっただけなのだ。

ジェンダー・バイナリーとセクシャリティ・マイノリティ差別の関係性

There are references aplenty in this look by Harris Reed, which features a Victoriana crinoline, 1980s shoulders, and pants of zoot-suit proportions. Photographed by Tyler Mitchell, Vogue, December 2020

この世には二元論というものがある。二元論とは、世界や事物の根本的な原理として、それらは背反する二つの原理や基本的要素から構成される、または二つからなる区分に分けられるとする概念のことだ。

ファッション界においての二元論は「性差」だ。ジェンダーは「男と女」という二元論的に成立する、という前提のもとコレクションが発表され、ショーが開催され、雑誌が刊行されている。ジェンダーがグラデーションを成しているのは当然の事実であるにもかかわらず、ファッションシステムのあらゆる側面がメンズ・ウィメンズというように分離化された概念に従属しているのは確かだ。

Wikipedia

例えば、新しいジーンズを買いに行く時、あなたはメンズかウィメンズのどちらかの性別に分類される存在となる。

実店舗において、メンズとウィメンズは別々のエリアもしくはフロア、時には建物までも分類されている。ジェンダーのスペクトラムに対する社会の意識が高まっているにもかかわらず、消費者は服を購入する際には「どちらかの」メンタルモデルを自分の中に呼び起こさなくてはならない。

現在、ショッピングは資本主義的な追及を超越し、自己実現や自己表現のための手段となっている。しかし、Eコマースサイトを覗くとジェンダーは二分されおり、まだまだクロスオーバーされていないのが現実だ。

生地やテキスタイルに性別などないのに、それらが「服」に姿を変えた途端、メンズ・ウィメンズというジェンダー・バイナリーが生じてしまう。

Wikipedia Tiziano Vecellio《Adam and Eve》(1550)

性を意味する「ジェンダー」と「セックス」という2つの言葉の違いについてここで一度触れておきたい。

一般的に“ジェンダー”は「社会・文化的に形成された性」を、“セックス”は「生物学的な性」を意味するとして使用されている。

社会や文化は人間が生み出した資産であるから、男女という生物的な自然の性差である「セックス」の上に「ジェンダー」という文化的な構造物が作られていると考えることができる。その点から上記の“ショッピング”について考えると、普段、自身のことをノンバイナリーやトランスジェンダーと自覚している人も、ショッピングの際にはどちらかの「セックス」を意識せざるを得ないのだ。

アメリカの哲学者ジュディス・バトラー (Judith P. Butler) は、ヘトロセクシズムがジェンダー・バイナリーを要請することにより、セクシャル・マイノリティ差別までもが発生してしまうと考えている。

セックスを土台としたジェンダーについての性区分や性役割というものは古来からある。今回議論の中心となった「トキシック・マスキュリニティ」もそのひとつだ。男は外で働け、強くいろ、泣くな、などといった男性への性的プレッシャーを指す。

現代のファッション界におけるジェンダーレスのパイオニア、アレッサンドロ・ミケーレ

Courtesy Gucci

VOGUE12月号を発端に起きた「トキシック・マスキュリニティ」議論や、ECサイトに根付くジェンダー・バイナリー問題、この文化的・社会的ジェンダー・バイナリーがセクシャル・マイノリティ差別を生み出してしまうことなど、昨今のファッション界ではジェンダー論がしばしば話題に上がる。

ファッションにおいてジェンダー・バイナリーもしくはジェンダーレスが注目されるようになったきっかけは、GUCCIの2015-16AWコレクションだと私は考えている。

「可もなく不可もなく」なデザインで、売り上げがまずまずだった2014年末、クリエイティブ・ディレクターであるフリーダ・ジャンニーニ (Frida Giannini) とCEOのパトリツィオ・ディ・マルコ (Patrizio di Marco) が同時退任した。

新任CEOに就任したマルコ・ビサーリ (Marco Bizzarri) は、GUCCIのエネルギーを高める型破りなデザイナーを探していた。GUCCIに新風を吹かせるべく、GUCCI社内ではなく他社のデザイナーを候補者としてピックアップしていた。

Courtesy Gucci

そこでマルコ・ビサーリは縁の下で長年GUCCIを支えてきたアレッサンドロ・ミケーレ (Alessandro Michele) をコーヒーに誘った。

2002年、FENDIでキャリアを積んでいたアレッサンドロ・ミケーレは、当時GUCCIのクリエイティブ・ディレクターを務めていたトム・フォード (Tom Ford) に見いだされ、入社。2011年5月、フォードの後任であったフリーダ・ジャンニーニに次ぐアソシエイト・クリエイティブ・ディレクターに就任したもののほぼ無名の存在だった。

マルコはもちろん、ミケーレに対して「クリエイティブ・ディレクターをやってみないか」などという提案をしようと目論んでいたのではない。現在のGUCCIについて話をしようと思ったのだ。

しかし、ミケーレとマルコの話に、思いがけず花が咲いたのだ。マルコは「ミケーレをもっと深く話したいと思った」という。

そしてマルコは決心したのだ。ジャンニーニが既に完成させている2015-16AWコレクションを解体し、ミケーレにコレクションを1から作らせるということを。

しかしコレクション発表の場であるショーは一週間後にまで迫っていた。

ミケーレは一週間以内にコレクションのクリエイティブ・ディレクションをこなさなくてはならないという切迫した状況で、すべてを完成させ予定通りに発表したのだ。

そしてミケーレが初めて指揮をとったGUCCIのこの2015-16AWコレクションはファッション史上に残るショッキングなものとなった。

新生GUCCIと世界を先導するジェンダーレスな2015-16AWコレクション

Pierre-Ange Carlotti 
GQ

GUCCI 2015-16AWコレクションでミケーレはフランスの哲学者ロラン・バルト (Roland Barthes) の「The Contemporary is the Untimely (コンテンポラリーは反時代的である) 」というメッセージを掲げ、GUCCIがこれまでに構築してきた「メンズ」の概念やラグジュアリーなコンセプトを打ち破り「ジェンダーレス」なコレクションを展開したのだ。新しいGUCCIを爆誕させた。

2015-16AW期の中で最も話題をさらったコレクションと言っても過言ではない。

Hugo Goldhoorn debuted Michele’s vision to the world for fall 2015. Courtesy Gucci

ミケーレは既に完成していたコレクションの構成を大幅かつ大胆に変更していた。モデルのキャスティングにランウエイのレイアウトはさながら、計36ルックのショーピースまでも大規模に作り替えた。例えば、ファースト・ルックは赤いリボン・ボウのシルク・ブラウスに又上の深いワイド・スラックスを合わせたジェンダーレスなスタイリングを見せた。

モデルのヒューゴ・ゴールドホーンはブロンドでロングヘアー。「性別がわからない」と話題になった。

ミケーレは、フェミニンとマスキュリンの境界を曖昧にした“ジェンダーレス”なコレクションを成功させ、ジャンニーニの面影を一蹴した新生GUCCIをセンセーショナルに披露したのだ。

そして、晴れてGUCCIのクリエイティブ・ディレクターに就任した。

Courtesy Gucci

今でこそ、ジェンダーレスという概念は受け入れられ、一般的なものとなってきたが当時のファッション界にとっては衝撃的だったのである。

WWD JAPAN編集長である村上要はショーに出席した部下から送られてきたファースト・ルックの写真を今でも覚えているという。何万というスタイリングや様々なトレンドを目撃してきたファッション誌の編集長の脳裏にも焼き付くほどに、衝撃的で改新的なコレクションだった。

しかしミケーレのそれはGUCCIの伝統を葬ったのとはまた違う。フォードが築き上げたデコラティブな大胆さと、ジャンニーニが生み出した華奢で上品な雰囲気を中和させたジェンダーレスでノームコアなスタイルを提案し、GUCCIを刷新したのだ。

A campaign for the Spring/Summer 2003 collection Photo: Mario Testino
VOGUE

新生GUCCIは瞬く間に世界中を魅了した。ジェームズ・フランコ (James Franco) やリアーナ (Rihanna) 、ケイト・モス (Kate Moss) などのセレブたちをもファンに付けた。

Jesse Grant
GQ

エイサップ・ロッキー (ASAP Rocky) はGUCCIのシルクのバブーシュカを纏った姿を披露している。バブーシュカとは、ロシアや東欧において年を召した女性が使うスカーフのことで、布の両端をあごの下で結んで使う三角巾のようなものだ。エイサップは『Babushka Boi』 (2019) という曲も披露するほどに気に入っているらしい。バブーシュカ・スタイルについて尋ねられたエイサップは「俺はバブーシュカを被ったり、ネイルをしたり女性のスタイルも取り入れる。やりたいことをやっているだけだ。知ってるか?境界線なんて無いんだぜ?」とコメントしている。

性の境界線。ミケーレはこれをどう認識しているのか。

単に性差を無くすのとは違う、ミケーレ流のジェンダーレスは「潜在的存在を見出すこと」

Kevin Tachman/Mg19

男性がファーやレースを纏ったり、ハイヒールを履くこと。現代を生きる私達はその姿に違和感を感じるかもしれないが、それは古き時代に先人たちが通った道でもあるのだ。ミケーレはそれを性の歴史や文化的に再考、あるいは再構築しているということになる。

ヨーロッパの封建時代において、ファーを使用した衣類は権力や富の象徴であった。バロック期にはレースやリボンを大胆に用い、曲線の多い華やかなデザインが男性の間で流行していた。

Wikipedia Hyacinthe Rigaud《Louis XIV of France》(1701)

16世紀、戦士たちが馬に乗る際、あぶみに引っ掛けて乗りやすくするために履いていたハイヒールを、「男らしさを強調するため」にヨーロッパの貴族たちが履き出したのがきっかけでハイヒールは流行した。

因みに163センチと、比較的低身長だったルイ14世は背を高く見せるためにハイヒールを愛用していたそうだ。

Wikipedia Bartholomeus Spranger《Hermaphroditos and Salmacis》(1580)
Hendrix dons layers of florals during a portrait session in 1969. CR

ギリシャ神話に登場する、ヘルメースを父にアプロディーテーを母に生まれた元男性で両性具有の神・ヘルマプロディートスのはだけたキトンをはじめ、ジミ・ヘンドリックス (Jimi Hendrix) がブラウスに花柄のジャケットを羽織るなど、ジェンダーレスなスタイルは昔からあった。

ドイツの哲学者で思想家のヴァルター・ベンヤミン (Walter Benjamin) の言葉に「過去の形跡とは、生気を失い化石化した遺跡でもミュージアムに幽閉された単なるオブジェでもない。むしろ、既にあったものに仕掛けられた起爆剤に点火することができる火花のもののようだと解釈するべきだ。その火花は、未来あふれる星座を生み出し、その未来において過去が現在と出会うのだ」というものがある。

ミケーレは、これを証明するかのように既にあったジェンダーレスというスタイルを新解釈し、新しい概念としての“ジェンダーレス”を生み出している。

ジェンダーレスは既に存在していた過去の産物ではある。

しかし、それを「男性らしさ・女性らしさを無くす」ということではなく「人間の中には両性が存在する」と捉えその既存の両性を露呈することにより一層フェミニン・マスキュリンなスタイルを完成させる。これがアレッサンドロ・ミケーレが提案する新しいジェンダーレスである。

Financial Times

ミケーレは「男性は、自分のなかにある女性らしさを前面に出したほうがもっと男らしくなれる」と語る。

それはただ単に「男性が女性の服を着る」(その逆も然り)ということではない。

男性がシースルーのシャツを纏って艶っぽい印象に見せることや、女性がオーバーサイズのテーラードジャケットを羽織ることで力強さを演出すること。

その人物の中に潜在している両性を導き出すことで、より一層魅力的なアイデンティティを手に入れることができるのだ。これはセクシャル・マイノリティにのみ向けられた理論ではなく、マジョリティにも言えることである。

REX
VOGUE

このように、男性の内なる女性的な魅力を表面化・可視化していくミケーレ流の“男らしさ”にマッチングしたのがハリー・スタイルズだ。ミケーレ曰く「ハリーの男らしさはパーフェクト」らしい。

2015年11月22日、ロサンゼルスで開催された「アメリカン・ミュージック・アワード 2015」に出席した際のグラフィカルなGUCCIのスーツ姿は、ハリーのシグネチャー・スタイルとなる。

一般的にマスキュリンなイメージのスーツだが、ハリーが披露したのはクリーム掛かったホワイト。繊細な花柄が散りばめられており、インナーにはゴージャスなブラウスをチョイスした。

Courtesy Gucci

ミケーレを魅了し彼のミューズとなったハリーは、GUCCI 2018-19AWのメンズ・テーラリング・コレクションのキャンペーンジュアルに起用された。

紳士らしいハンサムなスーツスタイルはもちろん、胸元の大きな襟に、大きな花の刺繍をあしらったジャケット姿を披露。女性的で官能的な一面も見せた。

ミケーレは女性的なモチーフやアイテムを取り入れることで、ハリーの男性的な魅力を引き出すことに成功している。

ミケーレGUCCIをオリジンとして始まったファッション界のジェンダー改革

Gucci 公式 YouTube

そしてミケーレは、性差を意識させないプレイフルなデザインで注目を浴びた2016年のGUCCIクルーズコレクションを機にそれ以降男女合同のファッションショーを披露している。

世界四大コレクションのひとつとされているミラノ・ファッション・ウィークは今もなお、ミラノ・モーダ・ウォーモ (メンズ)、ミラノ・モーダ・ドンナ (ウィメンズ)とショーを二分化している。2020年AWのミラノ・メンズコレクションで、GUCCIが3年半ぶりにランウェーショーを披露したのは有名な話だ。近年、やや盛り上がりに欠けていたミラノ・メンズのため、イタリアのファッション協会から「メンズのファッション・ウィークを盛り上げてほしい」と要請され、16年6月以来のショーを開いたのだ。

ミラノ・ファッション・ウィークのように伝統的な性差はあれど、ジェンダーに関するアイデンティティは千差万別。

ジェンダーの多様性やシームレスな概念は世界中で注目されている。

ミケーレがジェンダーレス革命を起こしたファッション界においては、個人のアイデンティティを守る、ジェンダーフルイドでノンバイナリーなファッション・ブランドがこれから先もっと増え、それこそジェンダーレスは「ニューノーマル」になっていくに違いない。

JW Anderson x Yoox Courtesy of Yoox
VOGUE

実際に、JW AndersonはファッションECサイトであるYOOXとコラボレーションしたカプセルコレクション「JW Anderson x YOOX」において、メンズとウィメンズのルックを融合させたジェンダーレスなデザインを披露した。

また、SAINT LAURENT、BALENCIAGA、GIVENCHYなどといった著名ブランドの多くが、2018年ミラノおよびパリ・ウィメンズ・ファッション・ウイークから男女合同ショーへシフトしており、男女合同というショー・スタイルは今やムーブメントを超越しスタンダードと化している。

ハイファッションの最先端を行くVOGUE誌は女性向けと定義されている。その表紙にハリー・スタイルズが登場したこと、これもファッション界におけるジェンダー論を揺り動かす出来事となったはずだ。

近年、様々なファッションシーンでジェンダーレスな挑戦が為されていることは明示の事実といえるだろう。

ミケーレのレインボープライド、あなたのレインボープライド

そしてジェンダーレスの最先端を行くGUCCIは2020年、またも新しい動きを見せている。公式サイト内に「MX」というカテゴリーを設置したのだ。

GUCCIのECサイトは、メンズとウィメンズのセクションにそれぞれ分けてアイテムを掲載をしているのだが、この「MX」ではメンズ・ウィメンズを分離せずにアイテムを披露。ジェンダー・バイナリーを取り払った場を提供したのだ。

今やGUCCIはジェンダーレスなブランドとしてお馴染みになったため「MX」を革新的なプロジェクトと捉え難いかもしれないが、ファッション産業全体で見れば、ECサイトのノンバイナリー化は停滞気味だ。GUCCIはやはり先進的だと言えるはずである。

Alessandro Michele, 45 anni, è il direttore creativo di Gucci dal gennaio 2015. Photo credit Ronan Gallagher VOGUE

ミケーレは、自己表現・自己実現としてのファッションアイテムを「いつもの自分」のまま手に取る、ということを叶えた第一人者といえるだろう。

ミケーレを先導とし、少しずつではあるが確実に、ファッションにおけるジェンダーのグラデーションはナチュラルなものへと化されている。2021年、そのグラデーションにどんな動きを見ることができるのだろう。見るだけではなく、意識して「見出す」べきなのかもしれない。


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