ベトナムの朝は早い。
早い時間帯から、街のあちこちで湯気が立ちのぼる。
通りにはフォーの香りが漂い、バイクの音がゆるやかに重なっていく。
日本では、家族で外に朝ごはんを食べに行くことはあまりない。
「そんなことない、うちはうどん屋に行くよ」という人もいるかもしれないが、少なくとも、僕の実家ではいつも家の食卓を囲んでいた。
だから、街の屋台で朝から多くの人が食事を楽しんでいる光景は、なんだか新鮮だった。
滞在中、朝ごはんを食べようと店を探すと、どこも朝の6時半や7時にはすでにオープンしている。
旅行者にとって、これはありがたいことだ。早朝から湯気の立つフォーをすすりながら、一日の始まりをゆっくり味わえる。
その日はたまたま祝日だったのか、訪れたローカル店はすでに満席。
家族連れ、友人同士、仕事前の人たち──それぞれが小さなプラスチック椅子に腰かけ、あたたかいスープを前に笑っていた。
通りには、道端に簡易のテーブルと椅子を出した屋台も並ぶ。そこで朝食をとる人々の姿が、また印象的だった。
道路と生活が、まるで一枚の風景のように溶け合っている。
“朝食は外で食べるもの”なのか、
“たまたま休日だから”なのか、真相はわからない。
けれど、その光景には、
一日の始まりを分かち合うようなあたたかさがあった。
PHOTO / TEXT 鈴木大喜
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