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ベトナム旅行記🇻🇳 vol.1 雑踏の中の微笑み。ベトナムで感じた“生きている”ということ

ベトナム、暮らしの温度
旅先で出会うのは、観光名所や美しい風景だけじゃない。
街の匂い、人の声、朝の光──そこには、その土地で生きる人々の“暮らしの温度”がある。

この連載ではフィルムを通してフォトグラファー鈴木大喜がベトナムを旅して感じた日常のリアルを綴る。

フォーの湯気が立ちのぼる朝の屋台、
笑顔で働く若者たちの姿、
夜になっても賑わいを見せるカフェ文化。

観光ガイドには載らない小さな発見を通して、
ベトナムという国の今を、そして人々の息づかいを感じていく。
それは、どこか懐かしくて、
そして少し羨ましくなるような“生きる景色”の記録

ベトナムから戻って、もう数週間が経った。
それなのに、あの雑踏の音や湿った空気の匂いが、ふとした瞬間に蘇る。
どこを見ても人が動き、声が響き、バイクがすれ違っていく。
“みんな、生きてるなぁ”──そんな言葉が自然と浮かんだ。

街の人たちは、どこか人懐っこくて、あたたかい。
古着屋を探していたとき、細い裏路地の奥で道に迷った。

声をかける前に、近くのおばちゃんが笑顔で「こっちだよ」と指を差してくれた。
一度ではなく、二度も。
そのさりげない優しさが、今も印象に残っている。

一方で、ベトナムという国の中にある“差”も感じた。
ローカルなコン市場の向かいには、ガラス張りの大きなデパート「GO Da Nang」。

屋台の湯気と、冷房のきいた店内。
そこにいる人々の服装も、漂う空気も、まるで別の世界のようだった。

市場では、道に積まれた服をあさる人、屋台で麺をすすりながら笑い合う人たち。
生活の熱が、そこにはあった。

そして何より印象的だったのは、若者たちの表情。
服屋の前で音楽に合わせて踊る店員たち、
カフェで笑いながら会話を続けるスタッフたち。

日本ならお客さんが来ると一旦姿勢を正すところだけれど、ベトナムでは、笑顔のまま自然体で働いている。

必要なときにはすぐに動くし、接客も丁寧。

“ちゃんとすること”と“楽しむこと”が、
どちらも大切にされているように感じた。

昼間から店先でビールを飲んでいたおじさんに話しかけられたこともあった。

言葉は通じないけれど、「ジャパン」とだけ伝えると、
満面の笑みで肩を組み、写真を一枚。
その笑顔のやわらかさが、旅の記憶をより鮮やかにした。

ベトナムの人たちは、笑顔で、優しくて、そしてまっすぐ。その笑顔の奥には、“生きる”というエネルギーがある。

PHOTO / TEXT
鈴木大喜