BLAZEVY(ブレイズヴィ)- 見えてないとこジャーナル

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ときめけ、踊る日常 #1「図書館CDディグ」

定期的に図書館でCDを借りている。サブスクで音楽を聞くことが主流となった時代にCDを、それもTSUTAYAやゲオではなく図書館で、という人はそんなに多くはない気がする。

そもそも図書館にCDが置いてあることを知らない人もいるのではないだろうか。図書館でCDを借り始めた最初のきっかけは、知り合いに誘われ初めてDJをやることになった際、DJのサンプリングソースとして流したい曲を手に入れるにはどうすれば…と悩んでいた時に、そういえば図書館って確かCD置いてるじゃん!ということに気づき借り出したのが始まり。

家からはTSUTAYAよりもゲオよりも図書館が一番近かったし、図書館はすごいことに無料でCDを借りられるし、何より想像以上に幅広いジャンルのCDが揃えられている。

初めてCDコーナーに足を運んだ時のこと。

思いついて来てみたはいいもののさすがにパンクロックやヒップホップなんて置いてないよな…と期待もせず棚を眺めていた。

まず見つけたのは落語とクラシック音楽。やっぱり図書館だしね、と立ち去ろうとした時、視界の端に捉えたのは見覚えのある文字面。

ん?と体の向きを直し棚に再度目を向けると、そこにあったのはBeastie boysの2004年のアルバム「To the 5 Boroughs」。え!嘘でしょ!?と一人静かに歓喜しながらCDを手に取る。これまで何度もこの図書館を訪れていたのにBeastie boysのCDが置かれているなんて露ほども考えたことがなかった。ということは…と目を皿にし棚を物色すると、YMO、スチャダラパー、Green day、忌野清志郎、吉田美奈子…次々と好きなアーティストのCDを発見し驚きと興奮で軽く目が回る。

この公共施設に、市民の憩いの場に、こんなイケてる音楽が詰め込まれた傑作CDが平然と何食わぬ顔で存在しているなんて!ちょっと待ってくれ。完全に図書館を舐めていた。
しかし、その所蔵ラインナップに対する偏見がかえって良いスパイスになった。このギャップに病みつきになってからというものの、定期的に図書館に足を運んでは「こんなものも図書館に!」という発見に毎回心を躍らせている。

98年生まれの私は、小学生の頃まではそれこそ音楽といえばCDで聞くものだったが、中学に上がる頃にはもうiPod。

現在はすっかりサブスクに慣れきっており、音楽は好きな曲を好きな時に手軽に聞けるものになっている。だからこそ、CDという物理的な物を手に取った時のリアルさ、パッケージから伝わるギチギチに詰め込まれたこだわり、即座に聞けないもどかしさと期待感、そしてアルバムの頭から1曲ずつ順番に歌詞カードを追いながら聞くという身体的に音楽と向き合っている感じ。

こういった全てが、幼い時分に音楽と初めて触れ合った頃のおぼつかない感情と少しの懐かしさ、それから消費ではなく体験として実直に音楽に触れる楽しさをくれる。

図書館のCDコーナーの面白さはどんなロックの名盤も、ドラマのサントラ集も、落語も、昭和も、平成も、令和も等しく均等に並べられていることにある。タワレコにあるようなスタッフの思いのこもったポップなど断じて存在しない。

SNSでの趣向を凝らした宣伝も、都会のビジョンに掲出された華々しいプロモーションビデオもここでは影すら見えない。無愛想で、でも商業的意図が付け入る隙の無い潔さ。そんな場所だからこそ「え!このCDが図書館にあるなんて!」のワクワクはやっぱり味わい深いし、何の気なしに借りたCDからお気に入りの曲を見つけたりすることもよくある。秋が近づいている。夜長のお供を探しに、ぜひ図書館でCDディグを。

✒️ オオクラ ナオコ