
前回のインタビューでは、「いつか琵琶湖の近くにお店を構えたい」と語っていたディレクター・和田さん。
あれから3年――その想いがついに形となり、「フィレール」が琵琶湖のほとりに直営店を今夏オープンします。
この場所にたどり着くまでには、さまざまな変化や葛藤、そして決断がありました。今回は前編・後編の2本立てで、「フィレール」が直営店を構えるまでの道のりをじっくり紐解いていきます。
ーー前回のインタビューから少し時間が経ちましたが、最近の「フィレール」はいかがですか?
和田さん: 根本の想いは以前と変わらず、「ずっと持てるような、100年定番でいてくれるシンプルなもの」を届けたいという気持ちです。
使い勝手の良いデザインや、さまざまなシーンで使えるバッグに加えて、私の「好き」が詰まったセレクト商品もオンラインで展開しています。
海外では、台北でのポップアップに参加するなど、新たな出会いも広がっていますが、やはり一番大きいのは、昨年から準備を進めてきた直営店のことですね。
物件探しからはじまり、内装や什器の選定、店舗運営の準備など、バタバタな毎日ですが、少しずつカタチになってきたと感じています。

ーー「お店を持ちたい」と以前おっしゃっていましたが、ついに動き出したんですね。
和田さん: はい、ようやく本格的に動き出しました。ブランドを始めたときから、「いつか実店舗を持ちたい」という気持ちはずっとありました。
商品を実際に手に取ってもらったり、お客さまとリアルにやり取りできる場所があるのは大切だと思っています。
昨年から少しずつ準備を進めていて、今は業者さんとの内装の打ち合わせや、店舗運営に必要な免許の講習を受けたりしながら、8月のオープンに向けて日々動いています。大変ですが、前向きに取り組んでいるところです。


ーー今回の直営店オープンに合わせて、「フィレール」の体制にも変化があったそうですね?
和田さん: はい。小・中学校の同級生で、アパレル業界出身の神田と、今は一緒に動いています。 以前から時々会って情報交換などをしていたのですが、ある日神田の方から入社に関する話がありました。ちょうど店舗出店を進めていたタイミングだったので、運営全般を任せるかたちで、今の体制になりました。
ーー神田さんは、もともと「フィレール」に興味があって和田さんとお話されたのでしょうか?
神田さん:和田が「フィレール」を立ち上げた頃からブランドの存在は知っていて、自分も同じ業界で働いていたので、活動内容などは以前から聞いていました。
当時は滋賀のセレクトショップに勤めていて、前職ではバッグブランドで多店勤務をしていた経験もありました。その中で、地方であっても面白い発信ができると感じるようになり、「都市部」や「情報発信地」で働くことにこだわる必要はないのかもしれない、と考え方が少しずつ変わっていきました。

ーーなるほど。長く販売業に携わり、さまざまな土地の人々と触れてきたからこそ、ご自身の価値観も変わってきたのですね。
神田さん:そうですね。会社として大きなビジネスに関われることも魅力ですが、自分の手で手がけていくことの楽しさや充実感も感じて、「フィレール」で働くことを決めました。

ーー店舗の場所が決まるまでに、少しトラブルがあったと伺いました。どのような経緯で現在の場所にたどり着いたのでしょうか?
和田さん:最初は昨年6月ごろ、琵琶湖の中洲にある料亭の跡地を借りる方向で話を進めていたんですが、オーナーさんとの間で情報の行き違いがあって、12月末にその話が急に白紙になってしまったんです。
ちょうどその頃、以前から神田とリサーチしていた「なぎさのテラス」のテナントに空きが出ているのを知って、募集締め切りまで1週間ほどしかないタイミングで、ダメもとで応募しました。その後、何度か「なぎさのテラス」の管理者の方と面談を重ねて、2月末に正式に決まりました。


一度白紙になった計画からの切り替え、かなりスピード感があったのですね。
和田さん:そうですね。でも、ずっと「琵琶湖の近くでお店をやりたい」と思っていたので、この景色より良い場所は正直ないなと思っています。
最初に進めていた物件の話がなくなったときは少し残念でしたが、今こうして「なぎさのテラス」に決まって、結果的には良かったと感じています。

ーー今回「フィレール」の直営店がオープンする場所について、改めて教えていただけますか?
和田さん:「フィレール」の直営店がオープンするのは、琵琶湖の美しい景色を一望できる「なぎさのテラス」内の一角です。エリア内には全4店舗があり、他の3店舗は食事がメインのお店です。「フィレール」は、直営店兼カフェという新しいスタイルで出店します。
そのため、他の店舗とは異なる楽しみ方を提供できると思っています。たとえば、隣で食事をしたあとや、待ち時間の合間に店内でゆっくり過ごしていただければと思っています。



いよいよ形になりはじめた直営店。
後編では、内装のこだわりや店づくりの裏話、そして「これからのフィレール」について、さらに深掘りしていきます。
フィレール公式オンラインサイト
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Filer(フィレール)は、日本発のシンプルで機能的なバッグを展開するバッグブランドです。生地にはこだわりを持ち、イタリアのリモンタ社の生地など世界の名だたるブランドから愛される生地も使用しています。シンプルで機能的な、時代に流されないBAGです。
PHOTO:鈴木 大喜
INTERVIEWER / TEXT:酒井 彩花