フランスのロックバンドPhoenixが今月、2022年11月リリースの新作『ALPHA ZULU』をひっさげ、4年ぶりの来日公演を果たした。前作『Ti Amo』はこれまで以上にポップ色が強い印象だったが、今作はグラミー賞を受賞した 『Wolfgang Amadeus Phoenix』のような「らしさ」も十分に感じられる作品となった。
この間、音楽シーンは大きく変わった。Covid-19パンデミックが世界を襲う中、ライブ活動は制限され、音楽制作の現場でもリモートが浸透した。Phoenixの面々にとってもそれは同じで、新作において、何かしらの影響を受けたことは想像に難くない。
大阪公演と東京公演の合間にあたる3月15日、細身のパンツ、ブーツというお馴染みのスタイルで現れたトーマス・マーズ(Vo.)とデック・ダーシー(B.)が、パンデミック期間中におけるバンドの変化や曲作りに生じた可能性、さらには、日本に対する思いについても語ってくれた。
ーー久しぶりの日本でのライブはどうでした?
デック:最高だったよ。日本の観客のみなさん素晴らしいので、本当に。自分たちには”特典”みたいな感じ、ここで演奏するのが。だからすごくよかったよ。
ーー日本のファンはどんな反応でしたか?
デック:すごく集中して音楽を聴いてくれていたよ。
トーマス:みんな、それぞれの国でスペシャルなんだけど、日本のみんなって、曲と曲の間もすごく静かにしてくれて何かを楽しみたいと、全てにフォーカスしてるんだよ。自分たちがショーを見に行った時もそういうふうにするから、日本人みたいなんだ、僕たちもね。(笑)そこに共通点も感じてるよ。
ーー5年ぶりにアルバムもリリースしました。その間、パンデミックもあり、心境の変化などいろいろな影響を受けていると思います。アルバムをつくり上げる中でどんな影響がありましたか?
トーマス:自分たちにとってテーマは作るものではなく降りてくるものだから、パンデミックがあったからこそ降りてきたテーマがあったんだ。いつもアンテナを立てていて、そこに来たものをできるだけ自然に吸い込むという感じで制作をしてるんだ。それがそのまま今回のアルバムに出たから、パンデミックが起こったというのも関係していると思う。
メンバーがそれぞれ、バラバラになってしまったので、スタジオでの作業っていうのが、すごく特別な時間になった。どれくらい一緒にいられるか、スタジオでどのくらい作業できるかも分からなかったから、その一つ一つの瞬間が特別だったね。
あと、もう一つはこのアルバムをルーブル美術館で制作したんだけど、パンデミックの誰もいない中、自分たちだけで作業したんだ。素晴らしい経験だったよ。
もちろんパンデミックって、悲しい出来事でもあったけど、それがあったからこそ過ごせた素晴らしい時間もあったし、すごく特別な経験というものをパンデミックによって経験できた。それがアルバムに影響したと思う。
ーー曲をつくる中での変化はありましたか?
デック:ちょっとだけ。トーマスが言ったように、みんなバラバラだったから、アイディアを自分たちで貯めて、短い時間でばっとみんなで作業することを強いられたんだ。制作の仕方も違っていて、初めてリモートで曲作りをしたよ。『Winter Solstice』 という曲。無意識に影響を受けていることもあるし、どのくらい曲作りに影響を受けているのか測るのは難しいかな。
トーマス:『Winter Solstice』みたいな曲が出来きて、リモートでできるんだったら、他の人ともできるんじゃないかっていうアイディアも今回生まれたんだ。それでエズラ(Vampire Weekend)とのコラボレーションも実現したんだ。そういうアイディアが生まれたというのもあると思うよ。
ーーMVを日本で撮影したり、メンバーそれぞれに日本への愛があると思う。これから日本でやってみたいことはありますか?
ーー時間があったら何かしたいことは?
トーマス:日本にいる間に会った人たちが、僕らに日本を紹介したいって言うんだ。例えば、『After Midnight』のMVを撮影してくれたPennacky、昨日一緒に演奏したGliiicoも、みんな彼らの日本を紹介したいみたいなんだ。みんなが紹介してくれる、それぞれの日本を楽しんでみたい。ブランコは温泉が大好きで、僕も温泉を楽しんでみたいな。小さい町に行ったり、田舎に行って、田舎の職人さんたちを訪ねたりしたいなと思っているよ。
デック:ここでレコーディングをやってみたいな。単に短い間だけ来て滞在するのではなくて、どのアルバムも新しい体験が反映されたものだから。それができたらいいかもね。
2023年3月23日公開インタビュー記事
Photo:Daiki Suzuki
interviewer / Text:Risa Kasai