15秒連続ドラマ。あるいは最後から2番目の映画。

lifestyle

15秒連続ドラマ。あるいは最後から2番目の映画。

15秒連続ドラマとは

ディレクターの辻村健二と申します。15秒連続ドラマとは、著者の経営する「株式会社ガイネン」の宣伝を目的として作られた作品でしたが、そんなことはどこ吹く風。

2021年制作の第一弾「GAINEN THE LASTDANCE」は、SNSを中心に毎週日曜日、15秒の作品を1年間、全52話で完結。主演に星能豊さんを迎え、星能さん以外の9割のシーンをフリー素材で作る、といった実験的な作品となり、一部でカルト的な人気を博しました。

「8時9分半だョ!全員集合」

そもそも、最初はアニメのCM前に入るアイキャッチ(物語の途中のCMの前後に挿入する短い映像 例:ルパンがハンドル握ろうと側転するやつ)をたくさん作るつもりで始めた企画でしたが、それでは勿体ないので、朝の連続テレビ小説が1話15分なのにかこつけて【15秒連続ドラマ】とパッケージ化し、SNSで展開していくこととなりました。

また、特徴として、僕が作る【15秒連続ドラマ】には脚本が一切ありません。あるのは、設定と関係性、それと衣装だけです。その理由は「“偶然性”を物語に取り込むにはどうしたらよいかを」真剣に考えた結果でした。

“偶然性”に勝るものはありません。

フィクションを志している者にとって矛盾する考えかもしれませんが、ドリフを例にとって説明したいと思います。「8時だョ!全員集合」は最高視聴率50%をたたき出す、ドリフターズが作ったおばけ番組。その徹底して作り上げられたコントに当時の視聴者は釘づけになっていました。しかし、その「8時だョ!全員集合」で一番、視聴者が記憶に残ったのはなんだったか?それは、“偶然”起きた「停電の回」。番組が始まるや否や、会場は停電。司会のいかりや長介はろうそくの灯りの中で、オープニングを行いました。

当時、5歳だった著者も鮮明に、いかりやさんが「8時9分半だョ!全員集合」と言ったことをおぼえています。※それと「火事の回」も印象的です。

その時から、自覚的だったかはわかりませんが、“偶然性”に勝るものなし。と考えるようになり、自分が物語を作る際にはどうやって“偶然性”を取り込むかを模索し、脚本を捨てるという暴挙にでることを自らに課しました。

ただ、それをするには、信用できる俳優さんにご出演いただき、その“身体性”を信頼するという意味においても、盟友:星能豊さんにお願いするしかないと思い、委ねました。

これは、最新作「THE RED13紅い十三人の女と俺と」にも繋がっていきます。

十三人の女

最新作「THE RED13紅い十三人の女と俺と」についてです。
まず、前作は1年間全52話を制作しましたが、正直しんどい(Ⓒ堂本剛)所もあり、

通常のドラマが1クール(約3か月)=13週間なので、毎週、星能さんと様々な女性とが織りなすラブストーリーにしようと考えました。となると、星能さんの役は自然とプレイボーイということになるのですが、ただのプレイボーイが浮名を流す話では面白くないので、そこに「汚れた血」(1986年のフランス映画)のSF設定のようなものを入れ込もうと思いました。そして、この物語の起点となったアイテムがあります。それは「Paris,Texas」のキャップ。このキャップを手に入れた瞬間、星能さんがヨレヨレのスーツを着て、キャップをかぶり彷徨うイメージ、つまりは、ヴィムヴェンダース監督の「パリ、テキサス」という映画がフラッシュバックし、そして、同時に「ここはどこ。わたしはだれ」という台詞&コピーも降りてきたのです。

ここからは、星能さんのお相手となる十三人の女たち。著者は「女性」を作品内で撮ったことが殆どありませんでした。それも今回の挑戦でありました。先ずは全13話のイメージとなるプレイリストを作成しました。既存の楽曲のイメージから、物語や関係性をふくらませていき、それぞれの楽曲タイトルが話数のタイトルになっていく仕掛けです。

また、今回はじめて、オーディションも行いました。通常は役があり、それに合う人を探すのがオーディションですが、今作も脚本はないので、まずは俳優のかたたちと話をし、プレイリストと照らし合わせながら、役柄での関係性や、この特殊な制作スタイルに賛同していただける方たちを選ばせていただきました。同時に、オファーにてご出演いただいた方たちもいらっしゃいます。どちらにしても、最高で最強の十三人が集まったと自負しているので、誰が出ているかは、是非、その目でご確認いただければと思います。

勝手にしてやる

今作は、著者に影響を与えた古今東西様々な作品のサンプリングから成り立っています。
いうなれば、これは著者流のHIPHOPなのです。サンプリングとは文脈をリスペクトする文化です。著者は仕事としての“映像”に触れる機会が長くなり、インディーズ映画からは10年近く離れていました。インディーズ映画界は、著者が離れている間、“ちゃんとしたモノ”を作る世界になっていました。

なので、ひとつくらい、こんな滅茶苦茶な作品があってもいいのではないかと思います。そんな想いを募らせ、今作「THE RED13紅い十三人の女と俺と」は15秒連続ドラマだけではなく、映画にしたいと考えています。近く、そのためにもクラウドファンディングを開始し、皆様にご支援をお願いしたいと思っています。

かつて、松田優作は言いました。「もっと自由でいたいんだよ。」と。
かつて、ホドロフスキーは言いました。「映画は詩であってほしい。」と。
そして、ゴダールが死んだ今、思うのです。「もう勝手にしてやる。」と。

あなたのご支援が、たったひとりの“映像ディレクター”を“映画監督”に変えられる可能性があることを覚えておいて欲しいのです。「勝手にしやがれ」なんて言わないで、ね。

HOT KEYWORD

WRITER

Kenji Tsujimura

Kenji Tsujimura

SHARE

RELATED

RECOMMEND