その人の人生を紡ぐそばにあるモノを。Filer(フィレール)ディレクター和田さんインタビュー

  • INTERVIEW

fashion

その人の人生を紡ぐそばにあるモノを。Filer(フィレール)ディレクター和田さんインタビュー

フランス語で”紡ぐ”を意味する「Filer(フィレール)」。

想いや時間、夢、人など様々なものを紡ぐ、そのそばにいつもある安心を。今回はそんな想いが込められたバックを展開するブランド「Filer(フィレール)」のディレクター和田さんをインタビュー。ブランド立ち上げからその裏にあるご自身の背景、そして現在・未来に紡ぐ思いを伺います。

ディレクター和田さんを読み解くヒストリー

ーー現在立ち上げから4年目というフィレール、ディレクターの和田さんご自身のプロフィールからフィレールの誕生までのストーリーをに教えてください。

生まれは滋賀県で、高校まで地元で過ごしてました。その後大学に進学し、2年ほどOA機器メーカーでコピー機の営業をしてました。その後は地元に近い鞄屋の「井野屋」に入社して、量販店をメインに担当した後、井野屋の自社ブランド「Un coeur(アンクール)」を立ち上げ、運営全般を担当してました。最初の3年は難しいことが多くありましたが、ありがたいことに徐々に売上も右肩上がりになり嬉しかったですね。でも自社ブランド立ち上げに携わって6年経った頃ブランドの成長を感じる反面、自分がやりたいことと、会社としてやれる範囲の違いを感じはじめ、もう一度自分でゼロからモノづくりを挑戦したいと思い退職し、その後2020年の1月末にフィレールをローンチしました。

ーーなるほど。最初はアパレルではなくコピー機の営業を担当されていたんですね。そこからアパレルへ転向した背景には何かあったのでしょうか?

コピー機の営業を通してめちゃくちゃ勉強になったのは、自分がコピー機自体に全く興味がなかったということと、自分の興味がないことを仕事にすることがこんなに時間を無駄にするんだなと思ったことですかね。(笑)

興味がなさすぎて熱量も入らないし営業成績も良くないし、悪循環が生まれてましたね。

そんな時にとりあえずうまく行くか分からないけど興味のある仕事をしないとスタートラインにも立っていないなと思い、元々興味のある分野であったファッションの業界を受けることにしました。

ーー第2章として新たにスタートした「井野屋」、在籍中には自社ブランド「アンクール」の立ち上げも担当されましたが、不安や戸惑いはありませんでしたか?

そうですね。正直最初は自分の興味があるファッションに携われてる達成感もあり、興味がある分仕事の覚えも早かったので楽しかったです。その時は量販店を担当していたんですが、内部にデザイナーがいなかったので自分でデザインの企画や提案を持って行っていました。それは現在のものづくりの土台になっているのでめちゃくちゃ学びになりましたね。

しかし4年目になって契約していた取引先の状況が変わり、量販店の営業から自社ブランド「アンクール」立ち上げに転向することになりました。最初は専門店やアパレルで受け入れられる商品を作ることが難しく戸惑いも多かったです。すぐに結果がでず社内で厳しい目で見られた時もありましたが、試行錯誤しながら色んな商品を作り徐々に成果が出ました。

その後ブランドも軌道に乗り始め、売り上げも右肩上がりになると部下を採用したり、PRや広報まわりも個人の裁量で決めることが多くなり、ブランドや人材を育成する面白さも学べたと思います。

ーー担当する幅の広さとスピード感ある動きに驚きです。そのような経験からご自身でもう一度挑戦することを選んだのですね。

そうですね、6年目ぐらいになってありがたいことにブランドの成長を感じる反面、慣れと経験から会社としてやれる範囲がおのずと見えてしまうことがあり、自分のやりたいことを全部やれるわけではないなと思うようになりました。あとはもう一度自分でゼロから、クイックに動きたいと思うようになり、やってみようかなと考え始めました。

フィレールとして大切にしたい想い

ーーそんな背景からローンチしたフィレール。フランス語で”紡ぐ”という意味があるようですが、この言葉を選んだ理由は何かあったのでしょうか。

なんでしょう(笑) うーん、ブランドについて考えてた時のノートを見返してたんですが、紡ぐっていう言葉の意味や響きがその時の自分に合ってたというか、、

紡ぐって色々意味があるじゃないですか?物語を紡ぐとか夢とか縁とか。その人それぞれの紡ぐがあるんじゃないかなと思うようになって、

その人の小さな出来事、いろんな出来事を紡いできたものの連続が人生で、その横にずっとあるようなものを作りたいなと思って「紡ぐ(フィレール)」って言葉にしたんですよね。

だから商品も流行りや時代に流されることなく、ずっと持てるような、100年定番でいてくれるシンプルなものを作ってます。

背伸びしないオシャレを楽しんでもらえたらいいなと思ってます。

ーーシンプルな外見の中には素敵な意味が深く込められているんですね。制作の際にもシンプルなデザインを意識して作られますか?

僕は商品を作る時は、まず生地から決めるんです。この生地いいな、使いたいな。と思ってからこの生地に合う形はどれかなっていうことを考えてます。

でも実はシンプルなデザインほど作るのって難しくて、シンプルすぎると既存のデザインにすごく似てしまうし、何が良いか考えすぎると分からなくなるんですよ。(笑)

だから夜にやれるとこまでやって一旦やめて、朝ゼロになった状態でもう一度見るんです。引き算のデザインをやってる分ちょっとしたところで違いを出していく必要があるからファーストインプレッションを大切にしてますね。

ーー私も夜に書いた文を朝もう一度見直します(笑)  朝になると感じることが変わっていたりする分、そういう時こそ直感を信じるのは大切ですね。

そうですね。お客さんも購入する時パッと見て良いかどうか決めるじゃないですか?だからこそ見た瞬間の自分の感覚や体感を大事にしてやってますね。

ーー今まで作ったアイテムや生地の中で和田さんが1番印象に残っているものや好きなものはありますか?

うーん、印象に残っているのはエバーグリーンというシリーズで使った生地が気に入ってますね。イタリアのリモンタ社の生地で、職人さんからするとすごく扱いにくい生地らしく、できる形が限られてるんです。すごくシンプルな分、形や取手の位置やサイズなど見えない部分の苦労が実はあって、時間をかけて作ったので印象に残ってます。

でも1番好きなのは自分でも愛用しているノアールかもですね。ノアールは黒って意味で、黒一色のみ展開なんですがシンプルに好きなデザインで、仕上がり具合が凄く気に入りました。

これからのフィレール “自らを生きる”をすること

ーーローンチした直後にコロナ…社会的にも企業的にも中々身動きが取れない時期だったと思いますが、実際どうでしたか?

正直、商品やサンプルが来るまでは事務作業がメインで、サンプルが来てからは既にコロナ禍だったので、営業もできず身動きが取れませんでした。

でも僕は勝手に運がいいと自分で思ってるんです。

普通に見たら運が悪いと思われて当然のことが起こっているんです。けど、なんかねそういう悪い時を振り返ると結構自分の人生のターニングポイントになってるんですよね。

コロナになって色々悪いことも起きたけど、結局それがあったから従来とは違うやり方を自分なりに考えることができたし、新たな方法や販路を見つけることができたと思っているんです。悪いことがあった後には必ず良いことがあると思ってます。頑張っていればですけどね(笑)

ーー悪いことがあると良いことがある。なるほど。

そうそう。あとはコロナが流行していた時期に相談できる人が身近に多かったのも助かりました。だからこそリアルで触れる場所をこれからは作りたいなと思ってます。

ーー立ち上げから4年目のフィレールですが今後の目標や作りたい商品、やりたいことなどはありますか?

そうですね、こんな商品が作りたいというより、琵琶湖の近くにお店兼事務所を作りたいなと考えてます。ローンチしたての頃はコロナの影響もあり、中々リアルな場を作れなかったので、ゆっくり商品を見れたり、お客さんの声が聞けるリアルでのタッチポイントを増やしてみたいですね。

様々な経験を過ごしながら、フィレールの今を生み出すディレクターの和田さん。

過去の経験を糧として、未来を “紡ぐ” 

Filerに込められた想いはまさに和田さんの生き様や大切にしているマインドを写しているようでした。

超情報化社会の現代において、その人らしい紡ぎ方を大切に、良い時もそうではない時もそばにいてくれるモノは私達を安心させ、明日を共に生きる活力となってくれるかもしれません。多様化される現代だからこそ、何を選択するかではなく、なぜ選択するか。

そこに込めた想いや願いが大切なのではないでしょうか。今後の和田さんとFilerの活躍が今から楽しみです。

Filer(フィレール) 公式オンラインサイト


INTERVIEWER / TEXT:酒井 彩花
PHOTO:中村 真

HOT KEYWORD

WRITER

blazevy

BLAZEVY

SHARE

RELATED

RECOMMEND