black midi、コロナ禍での延期を経て、破格の進化とともに帰還。ブラック・ミディ東京公演のライヴ・レポートを公開

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black midi、コロナ禍での延期を経て、破格の進化とともに帰還。ブラック・ミディ東京公演のライヴ・レポートを公開

black midi @ Spotify O-EAST 12月日 (SUN)

「衝撃のデビュー」と形容された前回の初来日公演が、2019年9月。あれから3年、世界がパンデミックに覆われる中、ブラック・ミディにも様々なことが起きた。 
まず、ギタリストのマット・ケルヴィンが休養のためバンドを離脱。しかし残った3人は、逆境さえ勢いを増すきっかけにしたかのように、セカンド・アルバム『Cavalcade』、さらにサード・アルバム『Hellfire』と立て続けに完成させてみせている。

そして、コロナ禍で延期を経て、ようやく実現した待望の再来日ツアーは、恐るべき若い才能が、この間どれほどの成長を遂げていたのかを、まざまざと見せつける内容になった。初日となる東京公演は2ステージのセット。入場者数の規制解除に伴って追加販売されたチケットも、すっかり売り切れてどちらもソールドアウトしている。

ゴジラのサントラをサンプリングしたヒップホップを出囃子にメンバーが舞台へ姿を現す頃には、すでにO-EASTのフロアは「ぎゅうぎゅう詰め」としか形容できないほどのオーディエンスで埋め尽くされていた。 

オープニングは「953」~「Speedway」と、ファースト・アルバム『Schlagenheim』冒頭の流れそのままの選曲だが、体感されるテンポ感や情報量が更新されていて、直ちにバンドの進化を実感。

3曲目に最新アルバムからの先行シングル曲「Welcome To Hell」、さらにオリジナル・アルバム未収録(※先日リリースされた日本独自企画盤『Live Fire』で初作品化)の「Lumps」を披露する頃には、早くも場内の興奮は最初のピークに達していた。 

若手では間違いなくトップクラスと折り紙付きのモーガン・シンプソンによるドラム・プレイは、パワフル&タイトなだけでなく、自由なしなやかさを増し、ブラック・ミディの根幹をガッチリと支える。ベースのキャメロン・ピクトンは、メガネとヒゲで見た目の怪しさも強化しつつ、激しくシャウトするリード・ヴォーカルも担うなど、いっそう大きな存在感を発揮するようになった。そして、ジョーディ・グリープは、両足をスムーズに滑らせる軽やかなステップとともに多彩なギターを繰り出し、クセのあるヴォーカルでバンドの個性に輪郭を与えている。また、キーボード担当のサポート・メンバー=セス・エヴァンスも、的確なバックアップのみならず、左右の腕を90度に広げて2台の鍵盤をブッ叩く熱演でパフォーマンスを盛り上げるのに貢献していた。

一口にジャズからの影響と言っても、スタンダードなものから高度なインプロヴィゼーションまで、このバンドが見せる引き出しの多さについては、情報過多な時代の申し子といったイメージで捉えられがちだ。ただ、「インターネット世代」といった平べったい言葉では形容しきれない、豊かな内実を伴った音楽的バックボーンがそこには間違いなくある。実際、彼らはストリーミング・サーヴィスが供給するリスニング環境の恩恵を楽しんではいるものの、それ以前に自宅で親が揃えていたレコード棚に触れたことを原体験として持っているそうだ。そうした背景があるからこそ、ライヴの場では、アルバムに対する賢しらな論評に対し、「エラそーに」と突っぱねられるような力強さを発揮できるのだと思う。

後半は、『Hellfire』からの「27 Questions」と「The Defence」、そしてまだレコードにはなっていない曲「Magician」という展開で、ジョーディがハンドマイクでディナー・ショーばりに歌い上げてみせる場面もあった。独特の声質だけで押し切るジョン・ライドンみたいなタイプと思いきや、ここにきてシンガーとしての実力も確実に伸ばしてきている。その姿からは、情報を混沌と撒き散らすだけでなく、より的確に鮮やかにコントロールできるようになった自信を感じた。

ファースト・ショウを締め括ったのは、『Cavalcade』からの「Slow」。1晩で2回というスケジュールもあってか、約1時間のセットが終わると、フロアからはアンコールを求める拍手が延々と続いた。
聞くところによると、2度目のステージは、かなりセットリストを変えてきたとのことで、筆者も含め「もし売り切れてなけりゃ、おかわりしたかった…」と考えた人も結構いたに違いない。

Text by 鈴木喜之

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