Gallery COMMONがコラージュアーティストIchi Tashiroを初の所属作家として迎えた大規模個展「Serendipity」を開催
これまでに、Parra(パラ)・ERIC ELMS(エリックエルムズ)・Cali Thornhill Dewitt(カリソーンヒルデウィット)・Waku(ワク)・TIDE(タイド)・河村康輔など様々なアートショーを手掛け、2021年に移転リニューアルしたGallery COMMONが初の所属作家として、Ichi Tashiroを迎えます。
ファッションとアート、ストリートとコマーシャル、サブカルチャーとメインストリームという逆説的でありながらも互いに共生的な二者間のギャップを埋めることを目指すGallery COMMONが見出した世界中が注目すIchi Tashiroという逸材の大規模個展を開催。
◉ Ichi Tashiro展覧会概要
今回の展覧会では「30年間の潜在意識の研究の成果」として、30年前の作品と同じプロセスで制作された新作を計14点発表いたします。日常的なものから独自のファンタジーの世界を創り出し、捨てられたものから魔法や新たな始まりを見出すという、無垢ともいえるほどストレートなアプローチ。そんな無邪気さ、不器用さも感じることのできるTashiroのシュールレアリスム的な作品は、それに付随するなぐり書きや勢いのある絵の具の斑点によってさらに魅力を増しています。
そして、金融新聞をカラフルな世界に変身させることに象徴されている遊び心と労働社会の徒労への否定は、Tashiroの人生哲学ともなっています。
しかしながら、これまで彼がキャリアを始めた頃と今では世界が大きく異なり、Tashiroの創作活動は、皮肉なことに、紙媒体としての新聞や雑誌が失われつつある絶望的な状況の中で展開されてきました。デジタルが急速に普及し、物理的な相互作用が失われる中、Tashiroは紙媒体の歴史と未来について考えます。本展で展示される木製パネルの形は、1700年代に江戸で生まれた折り紙の伝統からインスピレーションを得て制作されました。折り紙は、紙自体が彫刻やアートのような役割を果たしています。そんな折り紙を模して形で作られたパネル上に貼られた現代の新聞の切り抜きは、折り紙と違って、紙は文字や事実を伝えるものとして機能しています。それぞれ違う使い道の背景を持つ素材をコラージュするという行為は、これまで紙が文化や情報、そしてもちろん芸術を伝える手段として機能してきたことを明らかにし、紙の役割、ひいてはコミュニケーション手段やそれによって定義される創造性の可能性について、我々に示唆を与えているのです。
「新聞は徐々に過去の遺物になりつつ、紙媒体は無くなりつつある今。全人類の知識がスマートフォンの中に入っているし、AIはもはや人間にはできないことを簡単にこなしてしまう。そんな中、人間にあってロボットにないものは何かといえば、それは創造性だと思ってる。ひとつのルールや社会の狭い範囲の中で生きていくのではなく、遊んで、失敗して、セレンディピティに遭遇し、新しい発見を見出した時、その向こう側にある答えのない世界には、無限の可能性があるんだ。」そう語るTashiroの制作プロセスには、既定された側面を持つ世界に対する反論が込められています。ランダムな裂け目と計画的な切り込みを組み合わせることで、予測不可能な失敗から生まれるセレンディピティと、自らの運命を意図的に切り開く意志、両方を受諾する作品群。
テクノロジーの進歩により、正確で瞬時に答えが出る生活になった現代において、Tashiroの幻想的な作品は、想像力や創造力を育む神秘性やセレンディピティの重要性を再認識させます。
Tashiroの奇抜なアプローチそのものが、社会の窮屈な構造、多様性や不適合を抑圧する偏見、圧倒的な情報の洪水による消費者心理、そして人間の表現を抑制するあらゆる力への反発なのです。
- 会期:2022年2月26日(土)~3月20日(日)
- 会場:Gallery COMMON ( 東京都渋谷区神宮前 5-39-6 B1 )
- 開廊時間:12:00~19:00 (水~日) ※月・火休廊 ※国や自治体の要請等により日程や内容が変更になる可能性があります
◉ Ichi Tashiro(イチタシロ)プロフィール
1984年に愛媛県で生まれ、幼い頃からスクラップブッキングやコラージュを制作していた。当初は現実から逃避し、空想の世界に浸るために始めたこの趣味は、高校を卒業する頃には彼のアイデンティティの一部となり、18歳の時には着の身着のまま画材の入ったバックパックだけを携えてニューヨークへ移住し、独学でアーティストとしてのキャリアをスタートさせた。
渡米した当時はゴミ箱から新聞や雑誌を拾い路上で観光客にコラージュ作品を売りながら、稼いだ小銭をかき集めて食べ物を買い、夜は公園で寝る日もあれば、運が良ければ気前の良い友人宅のソファーや床で寝る日もありました。そんなホームレスとして過ごした時間は、彼の階級、価値観、社会規範、そして芸術の機能についての認識に深い影響を与えました。
その後、ニューヨークや香港のきらびやかなギャラリーやアートフェアの世界を旅し、自由と創造性の表現としてのアートと、マーケットや政治という退屈な現実との間の矛盾の露呈をさらに実感することになった。そのような中でも、自己表現とは何か、価値とは何かという問いに常に直面し、ニューヨークで一時は生命線であった「使い捨て」のメディアに何度も立ち戻ることになり、今回の展覧会の開催を決しました。現在は東京を拠点に活動。これまでに、ニューヨーク、香港、パリ、ロサンゼルス、アムステルダム、ベルギー、デンマーク、シンガポール、東京で個展やグループ展を開催し、Art Basel香港、ASIA Now Paris、Art TaipeiやArt Stage Singaporeなどのアートフェアでも作品を発表しています。