絶賛公開中『イン・ザ・ハイツ』ほかメッセージ性の高いミュージカル映画おすすめ3選

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絶賛公開中『イン・ザ・ハイツ』ほかメッセージ性の高いミュージカル映画おすすめ3選

魂を揺さぶる音楽とダンスで、観客の心に潤いと歓喜をもたらすミュージカル映画。さまざまな社会的トピックスやライフスタイルに焦点が当たるようになった現代で、そんなミュージカル映画から受け取るメッセージは力強く、自身に影響を与えるものも多い。

本コラムでは、ミュージカルの本場であるブロードウェイで公演され、後に映画化となった作品の中からひときわメッセージ性の高い作品をピックアップ。教訓、気づき、そしてエンターテインメントを楽しむ上でも有意義な鑑賞体験になることであろう映画たちを紹介する。

①『イン・ザ・ハイツ』(2021)

2008年初演のブロードウェイミュージカル。ディズニー映画『モアナと伝説の海』の音楽を手掛けたリン=マニュエル・ミランダによる原作、全曲作詞作曲、主演で話題となった作品。アメリカ演劇界で最も権威ある賞であるトニー賞を作品賞ふくむ4部門を受賞し、グラミー賞のミュージカルアルバム賞も受賞する快挙をなしとげた。

映画化にあたり、メガホンを執ったのは『クレイジー・リッチ!』のジョン・M・チュウ。原作を手掛けたリンもキャストとして参加している。

舞台はマンハッタン北西部、ラテン系移民が多く暮らす街ワシントン・ハイツ。富裕層の介入により都市の高級化(ジェントリフィケーション)が進み、金銭的に苦しい生活を強いられる住民たち。それでも彼らはくじけずに毎日を生きる。遠く離れた故郷の風を受け、生まれ育った場所への愛を忘れずに夢を抱き、ひたむきに生きる人々の姿をミュージカルの軽快なテンポで活写した作品。

主人公ウスナビがハイツの住人を紹介する「In the Heights」、宝クジが大当たりし皆で夢を語り合うアップナンバー「96,000」など、ラテン・ミュージックの陽気で活気あふれる曲調が気分を高揚させる。また、ジェントリフィケーション問題だけでなく、今なお世界中で根強く残り続けている移民問題にもスポットを当てているところがポイント。劇中では移民に対して国からの正当な手当を求める抗議デモのシーンが登場するなど、メッセージ性の高い作品となっている。

ラテン・コミュニティの力強さを描いた本作が評価されることはすなわち、さまざまなルーツを持つ人々の社会的な前進や活躍を世界に証明してみせたことになり、実に意義深い。世界を見渡すための視野を広げられる、今夏必見の映画だ。

②『ヘアスプレー』(2007)

1988年のジョン・ウォーターズ監督が手掛けた映画を元にした2002年のブロードウェイミュージカル『ヘアスプレー』。本作はその映画化作品である。

ミュージカルは2002年8月から上演され大ヒットを記録。翌年にはトニー賞13部門にノミネートされ、ミュージカル作品賞をはじめ8部門で受賞を果たした。

ビッグサイズの少女を主人公とし、周囲の目を気にせず明るく快活に生き、夢をつかみ取る姿を描いた映画『ヘアスプレー』。劇中では主人公のトレイシーが容姿を理由に外に出たがらない母親を連れ出すナンバー「Welcome To The 60’s」などが登場し、「痩せていることこそが理想であり、健全な状態である」という価値観に一石を投じる作品となっている。

縛られた体型への価値観で苦しむ人々に観てほしいだけでなく、近年のルッキズムに対するインスタグラムをはじめとしたハッシュタグ活動などが盛んであることからも、今一度多くの人に観られるべき作品だと感じる。

また、主人公のトレイシーが住む故郷ボルチモアは1962年当時、黒人差別の風潮が色濃く残る街でもあったため、『イン・ザ・ハイツ』同様、劇中で抗議デモを行うトレイシーたちの姿が観られるなど、全体を通して黒人差別・人種差別に対するメッセージを投げかけている作品でもある。

③『RENT/レント』(2005)

アメリカで封切となり大ヒットを記録したのち、日本ほか世界15か国でも各国語版として上演されたミュージカル。今なお絶大な人気を誇る、言わずと知れた名作である。

1996年のトニー賞では最優秀作品賞ほか4冠を達成。2005年にハリウッドで映画化され、日本では翌2006年に公開された。

本作ではニューヨークのイーストヴィレッジを舞台に、さまざまなセクシュアリティを抱く若者たちを主人公とした群像劇の形で物語が進んでいく。主要登場人物の中にゲイやレズビアンがいるほか、薬物中毒者やHIV陽性者もおり、劇中ではHIVの病魔に侵されていく描写や死に別れるシーンなどを挟み、現実的かつシビアな世界の中に身を置きながらも懸命に生きる登場人物たちの姿が描かれる。

マイノリティや自身を蝕む孤独を抱いて生きることの苦しみだけでなく、仲間とともに生きる喜び、明日の光を見つけていくことの希望をドラマチックなナンバーとともに歌い上げる。ミュージカルならではのエモーショナルな演出によって描かれる闇と光のコントラストが際立った作品となっている。

なかでも劇中歌である「Seasons of Love」は人生における1年という月日をどのように過ごすか、ということを歌った曲であり、大事なのは与えられた時間をどう生きるかという、『RENT』という作品そのものが伝えようとしているメッセージを表した曲。ファンの中でも特に人気の高い楽曲となっている。


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Ando Enu

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